経営・管理ビザからの永住取得
経営・管理ビザ/高度専門職1号ハの在留資格から永住許可を取得したいです。何に注意が必要ですか?
外国人経営者の永住審査では、経営している会社の損益財務、税金や公的年金の支払い、出国状況が審査されます。
経営・管理ビザから永住許可を取得
経営・管理ビザは、最長でも5年の在留期限があるため、銀行借入をする際には「安定性な在留」が不安定として、必要な金額を借りられない、5年超などの長期ローンが難しいことがあります。これは、経営者本人が在留資格が無くり、母国に帰ってしまうと、銀行が借入金を回収しにくくなるためです。
しかし、「永住許可を取得する」ことにで、在留期間に制限が無くなり、在留の安定性が向上するため、銀行取引には有利に働きます。
そのほかにも、配偶者や永住者の子供として日本で生まれた子どもの在留資格が「永住者の配偶者等」または「永住者」になるため、就労する職種やアルバイトの制限もなくなり、世帯全体の在留活動の自由度が向上します。もちろん永住者になれば、ご本人は会社経営を引退しても日本で暮らすことができます。
経営管理ビザから永住ビザを取得する際の要件
- 経営・管理ビザの取得から、永住許可を目指す場合、特に経営する会社の業績(損益財務)、役員報酬の水準、税金及び社会保険の適切な支払いに注意が必要です。
- 経営・管理ビザから永住申請は、申請時点で3年または5年ビザを持ってること、同じく申請時点で「繰越利益剰余金がプラスであること」が前提になります。業績が好調であれば、最速で経営・管理ビザの取得から2年~3年くらいで、3年ビザまたは5年ビザが許可される可能性があります。この点、高度専門職1号ハ又はJ-SKIPを取得していれば、当初から5年ビザが付与されるため、永住申請を企図する場合、それらの上位資格を検討できる場合は積極的に検討すべきです。
- なお、永住審査の審査期間は概ね1年以上の長い期間(*管轄の入国管理局による)を要しますので、在留期間が1年を切っているような場合、申請中に現在の在留資格更新の必要が生じる可能性があります。
経営管理ビザから永住権を取得する際の要件
①素行が善良であること(素行善良要件) |
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②十分な収入や資産があること(独立生計要件) |
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③国益適合要件 |
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④身元保証人 |
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役員報酬の注意点
経営・管理ビザの取得した当初は、申請人役員の税金・社会保険料の負担の軽減のため、会社の社会保険料負担を軽減するするために、役員報酬を月額20万円など低い水準に抑えているケースが多いと思います。
しかし、低い水準に抑えた役員報酬では、永住審査で求められる世帯の収入水準をクリアできない恐れがあります。永住審査では、年間の収入が「申請人300-360万円+扶養家族1名ごとに80万円くらいを加算した金額」が最低ラインの目安となります。年収を参照する過去5年間の役員報酬等がその水準以上になるように報酬を設定する必要があります。
また、高度専門職やJ-Skipでは、役員報酬の水準とともに安定的に報酬を支払えるだけの会社の損益財務も重要な要素になります。
会社経費で家賃、食費、交際費、車の費用などを払っているから、実質生活するためには十分であっても、役員報酬の水準が確認されます。
税金の申告と納税
経営者の永住審査では、申請人が経営する会社及び申請人個人の税金が適正に申告され、適切な時期に支払いをされていることが入国管理局より確認されます。納期限はしっかりと審査の対象になり、参照期間中の税金の支払いが少しでも遅れていると不許可理由になり得ます。
会社または個人が、税務署からの税務調査を受け、修正申告をしたり、過少申告加算税や無申告加算税などの税務上のペナルティが課される場合は、永住審査においてもネガティブな要因になります。
所得税法違反などの脱税や消費税不正還付(消費税法違反)などの犯罪行為で、刑法における罰を受けた場合は、永住申請云々以前に、経営・管理の在留資格が更新不許可(または取消)となり得るほか、その後、一定期間の反省の時を経る必要が有ります。
懲役と禁錮の場合は、刑務所から出所後10年を経過(執行猶予がついている場合は猶予期間が満了してから5年が経過)、罰金・拘留・科料の場合は、罰金支払い等を終えてから5年経過が求められます。
社会保険加入に関わる注意点
会社および個人は適法に社会保険に加入している必要があります。
経営管理ビザのガイドラインにも、社会保険への加入義務が明記されました。社会保険は「高い」という理由で、社会保険に加入していない事業者も零細事業者では多くありますが、法令上、法人は社長一人(従業員ゼロ)でも社会保険への加入義務があります。また、社長のみならず、雇用する従業員等に対しても、経営する会社が適法に社会保険に加入させている必要があります。
特に外国人経営者の経営する会社は外国人の従業員を雇用していることが多いところ、その適法な労務管理まで審査の対象になり得ます。
損益財務の状況についての注意点
申請人が経営する損益財務の状況は、申請時点に原則黒字が直近2期以上くらいは継続していること、債務超過は論外で、B/S上の繰越利益剰余金がプラスであること、などが確認されます。一般的に、税務上の観点で少しの赤字を出していたほうが得であるなどの理由で利益を圧縮していると永住審査には不利益になることもあるので留意すべきです。
高度専門職1号ハ(報酬得点が高い場合)やJ-Skipの在留資格では高額な役員報酬が支払われることがあります。その場合は、申請人の役員報酬が適切に支払われる背景、つまり事業実態もまた確認される場合があります。損益財務については、実際に決算報告書などを過去数年分確認しないと分からないため、専門家に相談されるとよいでしょう。
You Tube動画講座:経営管理ビザからの永住申請のポイント
この記事を書いた人
村井将一(むらい まさかず)
1977年生まれ。三菱UFJモルガン・スタンレー証券(三菱UFJフィナンシャルグループと米Morgan Stanleyのジョイントベンチャー)で企業の資金調達やM&Aなどのアドバイスを行う投資銀行業務に18年間従事。在職中500人を超える起業家や上場企業経営者に対して事業計画や資本政策などの財務・資本戦略についての助言を実施
専門は外国人の在留資格手続きに関わるコンサルティング及び財務コンサルティング。趣味は日本人アイドルのコンサートとディカプリオ映画と猫と遊ぶこと。
入国管理局申請取次行政書士・CFP(Certified Financial Planner)・日本証券アナリスト協会検定会員