高度人材のための永住権・永住ビザ取得ガイド
高度人材のための永住権・永住ビザ取得ガイド
日本で活躍する高度人材の方へ、永住権・永住ビザ取得に関する情報をわかりやすく解説します。高度人材に対しては永住権の取得条件が大幅に緩和されており、通常の外国人よりも短期間で永住権を取得できる可能性があります。
高度人材が最短1年・3年で永住権を取得する条件
高度専門職の在留資格を持つ方は、日本での滞在期間が最短1年または3年で永住許可申請が可能です。また、たとえ現在の在留資格が高度専門職でなくても、高度専門職ポイントが70点以上であれば、同様に永住申請の道が開かれます。
ただし、ポイントを満たしただけでは自動的に永住権が付与されるわけではなく、その他の要件もクリアする必要があります。
永住権・永住ビザ取得のメリット
高度人材として永住権を取得することで、以下のような多くのメリットが得られます。
- 活動の自由度が広がる
高度専門職で課せられていた職務や就労先の制限がなくなり、どのような分野でも自由に活動が可能になります。ビジネスを始める(起業)こともリタイヤすることもできます。 - 在留期間が無期限になる
ビザの更新手続きが不要になり、安心して日本での生活を続けられます。5年ビザの高度人材でも更新が必要で、入国管理局の許可をもらう必要があります。 - 家族の就労制限が解除
配偶者や子どもも自由に仕事ができるようになり、家族全体での生活の幅が広がります。 - ビジネスチャンスが拡大
永住権を持つことで、銀行からの住宅ローンや事業資金の借り入れがスムーズになり、起業や不動産購入も有利に進められます。銀行によっては経営者が永住者でないとお金を貸さない銀行もあります。
高度人材(高度専門職ポイント70点以上)の永住要件
高度人材は、通常10年が必要とされる在留期間が大きく緩和されます。高度専門職ポイント70点以上は日本での在留が最短3年、80点以上の場合は同じく最短1年で永住権・永住ビザの申請ができます。高度専門職の在留資格の人だけでなく、教授や技術・人文知識・国際業務などの在留資格の人も対象になります。
高度専門職ポイントを計算してみる
高度専門職1号イ(大学教員、研究者など)
高度専門職1号ロ(会社員、技術者など)
ただし、法令順守や公的義務の履行などは、通常の永住申請と同じように厳しく審査されます。
①素行が善良であること(素行要件)
②独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること(独立生計要件)
③その者の永住が日本の利益となること(国益適合要件)
④身元保証人の確保
(1)素行要件:素行が善良であること
① 日本国の法令に違反して、懲役・禁錮・罰金に課されたことがないこと
日本の法令に違反して懲役・禁錮・罰金・拘留・科料に課されたことがないことが要件になります。ただし、懲役と禁錮の場合は、刑務所から出所後10年を経過(執行猶予がついている場合は猶予期間が満了してから5年が経過)、罰金・拘留・科料の場合は、罰金支払い等を終えてから5年経過していれば、日本国の法令に違反して処罰されたものとは扱わないことになります。また、少年法による保護処分が継続中でないことが必要です。
②日常生活・社会生活で違法行為や風紀を乱す行為を繰り返し行っていないこと
こちらは、懲役・禁錮・罰金・拘留・科料に該当しないような軽微な違反などを繰り返し行っていないことが要件となります。交通違反の反則金や家族滞在ビザで一緒に日本に滞在する家族の週28時間以上の労働、街宣活動などで何度も指摘を受けているような場合が該当します。
(交通違反)
交通違反の反則金は罰金ではありませんが、何度も繰り返すような場合には、違法行為や風紀を乱す行為を繰り返し行っていることに該当してしまいす。現時点の審査実務上の交通違反等の目安は、過去5年で5回以下、過去2年で4回以上は難しいようです。例えば、駐車禁止で反則切符を切られたことなどはあまり記憶に残っていないことも多いため、警察署で運転記録証明書を取得して確認することができます。
なお、無免許運転、飲酒運転やひき逃げなどの重い罪(懲役・禁錮・罰金・拘留・科料に該当)であると一度でも罰金の支払い等を終えてから5年の経過などが必要です。
(家族の法令違反に注意)
家族滞在ビザで在留する家族がいる場合、その家族滞在ビザを持っている配偶者や子供に法令違反がある場合には、申請人本人にも影響があり得ます。その場合は、適正な状況に改めてから数年経過が必要です。
(2)独立生計要件:独立の生計を営むに足りる資産や技能があること
入国管理局では「日常生活において公共の負担になっておらず、その有する資産または技能等から見て将来において安定し生活が見込まれること」を条件としています。公共の負担になっていないということですので、生活保護などは受けていないという前提です。
高度専門職1号ロ、ハで高度専門職ポイントを計算する場合は、年収300万円以下となるとその他の点数が70点以上となっても高度人材とはみなされません。
また、扶養する人数によっては、より多くの収入額を求められます。実務では概ね扶養家族一人につき70−80万円程度の加算が必要と言われています。つまり、妻と子供2人の3人を扶養している人は、下限の300万円+70−80万円×3人分=510万円から540万円の年収が目安となります。
(転職した場合)
高度専門職の場合、転職のたびに在留資格の変更許可申請をしなければなりません。転職を繰り返している場合など、転職直後は勤続の安定性の観点から不許可となる可能性もあるため、転職後1年くらいは経過していることが望ましいといえます。
(3)国益適合要件:その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
永住権を取得する外国人の存在が、日本の国益に貢献しているかどうかも審査の対象となります。高度専門職での在留資格や特定活動で3年以上、または80点以上で1年以上滞在していることが求められます。具体的には5つあります。
①高度人材ポイントの点数を満たすこと
- 高度人材ポイント70点以上で3年以上継続して日本に在留していること
- 高度人材ポイント80点以上で1年以上継続して日本に在留していること
②納税義務等公的義務を守っていること
税金や年金の未納がないこと、納付期限を守って支払っていることが審査されます。また、税法上適切な扶養関係であることも重要です。扶養家族を不正に申告している場合は、不許可となる可能性があります。
税金や年金を支払っていない場合、または、支払ってはいても納付期限までに支払っていない場合には不許可になります。
③現に有している在留資格について最長の在留期間をもって在留していること
高度専門職は当初から5年の在留資格を付与されているため問題になりません。
高度専門職の在留資格以外の人は、3年以上の在留資格である必要があります。技術・人文知識・国際業務や日本人の配偶者等などの在留資格で在留期間が1年の場合は、要件を満たさないこととなります。
④公衆衛生上の観点から有害となる恐れがないこと
こちらは、具体的には、麻薬や大麻、覚醒剤などの中毒者でないことや、エボラ出血熱、ペストなどの感染症に罹患していないことです。
⑤著しく公益を害する行為をするおそれがないと認められること
こちらは、素行要件のところでも審査される点ですが、国益適合要件においても審査されます。内容は、素行要件と同様になります。
(4)身元保証人がいること
永住申請をする場合は、必ず「身元保証人」を用意しなければなりません。永住申請において、身元保証人になれる人は日本人か、外国人の場合は「永住者」の人で、安定的な収入があり、納税をきちんとしている人でなければなりません。
身元保証人になれるのは次のいずれかの人です:
- 日本国籍を持っている人(日本人)
- **「永住者」**の在留資格を持つ外国人
また、身元保証人には以下の条件を満たすことが求められます。
- 安定した収入があること:目安として、年間収入が300万円以上であることが一般的です。安定した収入があるかどうかは、納税証明書や給与明細などで確認されます。
- 納税を適切に行っていること:所得税や住民税など、納税義務をしっかりと果たしていることが重要です。未納がある場合は、身元保証人として認められない可能性があります。
- 素行が良好であること:身元保証人自身が法令を遵守し、社会的信用があることも必要です。
身元保証人の役割
身元保証人は、永住権申請者に対して次のような責任を負います。
- 滞在費の保証
永住権申請者が日本での生活費や滞在費を十分に賄えるよう、万が一の場合にはサポートするという道義的責任を負います。ただし、法律的に身元保証人が実際に滞在費を支払う義務があるわけではありません。 - 帰国費用の保証
申請者が日本を離れる際、帰国費用を負担することを道義的に保証します。これも、法的な義務ではなく、道義的な責任にとどまります。 - 法令遵守の保証
永住権申請者が日本での生活中に法令を遵守するように保証します。申請者が法律を違反した場合、身元保証人がその責任を負うことはありませんが、保証人としての立場は影響を受ける可能性があります。
(ご参考:永住申請の身元保証人を頼むポイント)
永住申請の審査期間
永住申請の審査期間は、入国管理局HPでは標準処理期間4ヶ月と記載されていますが、このレポートの執筆時点では、実際は10ヶ月から15ヶ月程度かかっています。他の在留資格と同様に申請した人の個別の状況や申請時期、申請した入国管理局などによっても異なります。
まとめ
高度人材として日本で活躍している方にとって、永住権の取得は大きなメリットをもたらします。特に、短期間での申請が可能であり、キャリアや生活の安定を得るための重要なステップです。自分が条件を満たしているかどうかをチェックし、申請に向けた準備を進めましょう。
不明な点があれば、専門家に相談し、スムーズな永住権取得を目指しましょう!
プロフェッショナル
村井将一(むらい まさかず)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券(三菱UFJフィナンシャルグループと米モルガン・スタンレーとのジョイントベンチャー)で企業の資金調達やM&Aなどのアドバイスを行う投資銀行業務に従事。在職中、現場業務に従事しながら従業員組合中央執行委員として職場内の外国人や女性の活躍などのダイバシティ推進、労務環境改善活動に従事。専門は外国人の在留資格手続きに関わるコンサルティング及び財務コンサルティング。入国管理局申請取次行政書士・CFP(Certified Financial Planner)・日本証券アナリスト協会検定会員