周波数マーケティング:見えないオーラが顧客を呼ぶ~士業・専門職のための“無理せず選ばれる”共鳴型集客戦略
なぜ、あなたのところに「同じようなお客さん」ばかりが来るのか? 行政書士実務から見えた共鳴の法則
「なぜかこの人種ばかり来る」「なぜかこの層だけに響く」
行政書士として実務を重ねる中で、私はある“不思議な現象”に気づきました。
わたしは、三菱UFJモルガン・スタンレーという証券会社の投資銀行に18年間勤務したち、退職して行政書士として独立しました。
私はもともと、M&Aやエクイティ(株式)やデット(債券)などファイナンス業務などで、弁護士さんや会計士さんなどの他の士業とは頻繁に仕事をする機会はありましたが、自身が弁護士事務所や会計事務所での実務経験はなく、即独(そくどく)とよばれる、実務未経験で顧客もないまま独立開業してしまう、一番やってはいけないケースでの独立でした。
しかたなく、私の事務所「コンチネンタル国際行政書士事務所(現、コンチネンタル国際行政書士法人」では、外国人の起業支援、モルガン・スタンレーのような外資系企業に勤務する高度人材にかかわるビザ手続きなどを専門として業務をスタートしました。
開業後に直面した現実
入管庁の統計によると、日本にいる外国人の8割強がアジア系国籍で、1割弱(8%くらい)が米欧(ロシア含む)、残り1割がオセアニア・南米・アフリカに分散しています。ビザとよばれる在留資格の種類で言うと、長年日本に住む永住者を除くと、技能実習やいわゆる普通の就労ビザの技術・人文知識・国際業務、留学、特定技能(簡単に言うと工場や建設現場などで働くためのビザ)です。
図表:入管庁統計
ですので、同じ東京でビザ専門で活動する行政書士でも、アジア系の留学生や元技能実習生、アジア系外国人と日本人の国際結婚などを主に取り扱う先生がメインかと思います。
開業当初、自分も本邦在留外国人のボリュームゾーンのアジア系外国人、元技能実習生や留学生からの相談、またはその雇用主、婚約者などからの相談が主となるのかと思っていました。自分はこれまでは、証券会社で上場会社のクライアントを相手に投資銀行業務に従事していましたが、なんの看板もなく、コネもなく、資金力もなく、しかも脱サラからのそのまま独立し業務未経験の自分なんぞを、どこの誰が相手にしてくれるのか不透明でした。トラックレコードが無い無の状態なので予測すらもできませんでした。
ならない電話とメールボックスに毎日泣きながらウェブサイトに広告を出すなど試行錯誤してみたのですが、ふたを開けてみると、世の中に多いとされるアジア系の技能実習生や留学生からの相談、その雇用主や婚約者からの相談、アジア系の若い女性と中高年の日本人男性の典型的国際結婚カップルの案件は、問い合わせすらまったく来ませんでした。
開業から4-5か月くらいしてようやく、士業交流会や知人、ウェブサイトなどの問い合わせから、ご相談をいただくようになりました。元勤務先の親密先だった本邦大企業の外国人経営者(胃が痛くなりました)、大学教授、誰でも知っている外資系グローバル企業のエンジニアさんなどです。当初はまったく気にしていなかったのですが、この流れは7年後の今まで続くことになります。
現在、当法人では、依頼される方の9割以上が、欧米出身の高度人材(*ここでの高度人材は入管法における高度専門職ポイントで80ポイント以上となり高度人材に該当する人と定義します)。国籍でいえばアメリカ・イギリスその他のEU諸国、職業は、本邦国立大学などに招聘された外国人教授や理化学研究所などの研究者、またはグローバルIT企業の修士卒以上のエンジニアです。特に理系博士号取得者とMBAが多い印象です。国際結婚案件でも、申請人は日本人女性と結婚する欧米人男性が8割から9割です。
なぜウチは「ボリュームゾーンの人たちから見向きもされないのか?」、「なぜ学者や有名企業の理系の人たちばかりが集まってくるのか」と不思議でなりませんでした。日本の医師免許をもつ外国人などは日常でも病院でもほとんど見かけないにもかかわらず、その人たちはどうやってウチを見つけてくれたのか?
読者のみなさんも実は同じような属性の人が多いのではないでしょうか?
女性が多い、ご高齢の方が多い、芸術家肌の人が多い、とてもおおざっぱな性格の人が多い、気難しい性格の人が多い、などです。
この現象はすべての士業や専門家に共通しているのかと思います。
周波数マーケティングとは
この現象を私は「周波数マーケティング」と呼び、体系化し始めました。
どうしても気になって、自分でも納得したかったからです。
しかし、この“周波数マーケティング”を整理できるようになってから、マーケティングが変わりました。
無理に売るのではなく、「ウチに合う人だけに届く」ようになったのです。
ここでの「周波数」とは、なぜか共鳴を呼ぶ「あなたの発する周波数」を指します。
例えば、小鳥の繁殖期に、オスがきれいな声を出してメスを呼んだとします。
しかし、その小鳥の呼び声で、昆虫やトラ、チンパンジーは反応しません。
この周波数をキャッチできる同種の生き物だけに届くのです。
この周波数マーケティングでは、行政書士実務を通じて見えてきた「特定の層だけが反応する」現象を、文化資本、社会階層、ブランド共鳴といった学術理論などをベースに理論化しています。
“見えないオーラ”=文化資本や価値観、世界観が顧客を引き寄せているという観察を、社会学・心理学・マーケティングの学術的な先行研究((ブルデュー、ギブソン、ケラー等)と結びつけながら、「売らずに選ばれる仕組み」として提案します。すべての士業・専門職が「無理なく共鳴する顧客」とつながる方法論を模索していきます(SNSのコメント欄などにご意見やご感想もいただだけると励みになります)。
士業や専門家の先生方は、それぞれにとても素晴らしい能力や魅力をを持っていると思います。不肖者の私以上にクライアントさんと良好な関係を築き、付加価値を提供し、ご活躍されることと思っています。
“営業しなくても選ばれる士業専門家”
“SNSや広告に頼らずに“選ばれる存在”になりたい専門職”
“顧客との「世界観の一致」によって高満足・高信頼の仕事を実現したい人”
“特定の顧客層への共感的なアプローチを模索する人”
になるためのを方策について提言したいと思っています。
記事(全10回)
- なぜ、あなたのところに“あの顧客”が来るのか?
- “周波数”とは何か?──顧客が共鳴する見えない力
- なぜ周波数が一致するのか──文化資本と世界観の一致
- 行政書士として見えてきた“共鳴の実例”
- すべての士業にある“におい”──見えないブランディング
- 誰と共鳴したいか?──顧客設計と自己理解
- 自分の周波数を可視化するワーク
- 士業の集客を“戦術”から“世界観”へシフトする
- 誰もが「響き合う場」をつくれる──多様性のマーケティング
- 周波数を信じて立つ──営業しなくても選ばれる存在へ
この記事を書いた人
村井将一(むらい まさかず)
コンチネンタル国際行政書士法人 代表社員 マネージング・ディレクター
三菱UFJモルガン・スタンレー証券(三菱UFJフィナンシャルグループと米モルガン・スタンレーとのジョイントベンチャー)で企業の資金調達やM&Aなどのアドバイスを行う投資銀行業務に従事。
在職中、現場業務に従事しながら従業員組合中央執行委員として職場内の外国人や女性の活躍などのダイバシティ推進、セクハラ・パワハラ・過剰残業対策など労務環境改善活動に従事。専門は外国人の在留資格手続きに関わるコンサルティング及び財務コンサルティング。
行政書士 東京都行政書士会港支部 副支部長
日本証券アナリスト協会検定会員
CFP(Certified Financial Planner)
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