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はじめての外国人スタッフの採用 (Lesson 2:技術・人文知識・国際業務)

はじめての外国人スタッフの採用
Lesson 2:就労ビザの王道 技術・人文知識・国際業務

外国人が日本で働く場合の就労系在留資格(就労ビザ)で最も多いケースが、この技術・人文知識・国際業務の在留資格です。それぞれの頭文字を取って「技・人・国」「技人国ビザ」と呼ぶことが多くあります。
この技術・人文知識・国際業務の在留資格を一言でいうならば、大学等の高等教育などで得た専門的知識や素養を活かして働く、いわゆるホワイトカラーの仕事、といったイメージです。
本稿では、以下に「はじめて外国人を採用する会社や経営者」のために、その要件や注意点などをご解説していきます。

どのような職種が該当するのか

技術・人文知識・国際業務の在留資格では:①技術(理系)や人文知識(文系)の分野の「専門知識」を必要とする業務、②「外国人ならでは」の思考や感受性を必要とするような業務が該当すると法令上定められています。
いわゆる総合職で採用してジョブローテーションで社員を育てて行くことが多い日本企業にとって、何をもって理系や文系の専門知識や外国人ならではの感受性が必要な職種のか具体的な線引きは難しいところですが、現在の入国管理局の運用では以下のような職種が該当します。

一方、入国管理局が例示している不許可の事例や実際の不許可となった事案から、技術や人文知識の専門知識を必要とする、または、外国人ならではの思考や感受性を必要とするとは認められない(=技術・人文知識・国際業務には該当しない=単純労働とみなされる)とされる職種例は以下の通りです。

入国管理局の審査では、形式的な業務内容でなく、実質的な業務内容、つまり具体的にその人がどのような業務をどのくらいの頻度や業務量等をこなし、実態として専門的技術的な知見が必要なものなのか、外国人としての思考や感受性が必要なものかを判断していきます。実際の実務審査においては、特に単純作業とみなされそうな職種においては、専門的な知識を必要とする職務内容とその業務の量を明確に示して立証していかなければなりません。

技術・人文知識・国際業務の要件

技術・人文知識・国際業務の在留資格の取得には以下の大きく6つの要件を満たす必要があります。

【要件】
①専門的な知識・素養の必要な職種であること
②職務に関連するが学歴や職歴を有していること
③日本人と同等額以上の給料が支払われること
④会社と外国人の間で雇用契約等の契約が結ばれていること
⑤雇用する会社の経営状態が安定的であること
⑥外国人が法令を遵守し犯罪等を起こしていないこと

(1)専門的な知識や素養が必要な職種であること

先に見てきたように、技術・人文知識・国際業務では、専門的な知識や素養が必要な職種にしか認められていません(=入国管理局からいわゆる単純労働とみなされる職種では認められません)。なお、これらは勤務の実態をもって判断されます。

十分な業務量が必要

たとえば、求められている専門的に知識や素養が必要な職務に対して十分な業務量が確保されているかという点です。例えば、「商学部で会計学」を専攻した留学生を「経理財務」の職種で採用しようとする場、経理財務の仕事を「主たる仕事」にできるだけの十分な業務量が確保されていることが必要になります。

例えば、事例を見ると、飲食店のホール係の仕事が全体の8割、会計記帳の仕事が2割では経理財務の仕事に十分な業務量があるとは認められず、入国管理局からの許可はおりません(=入国管理局からは実態は単純労働で採用するとみなされる)。

研修計画とキャリアプラン

また、行おうとする職種に「技術・人文知識・国際業務」に該当しない業務が含まれる場合であっても、それが入社当初に行われる研修の一環であって、今後「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務を行う上で必ず必要となるものであり、日本人についても入社当初は同様の研修に従事するといった場合には、あらかじめ具体的な研修計画等を提出することにより、技術・人文知識・国際業務の在留資格が認められる場合があります。ただし、例えば、ホテルに就職する場合、研修と称して長期にわたって、専らレストランでの配膳や客室の清掃等のように 「技術・人文知識・国際業務」に該当しない業務に従事するといった場合には許容されません(入国管理局ガイドライン)。

(2)職務に関連する学歴・職歴

働こうとする職務に関連する以下の学歴または実務経験が必要になります。

学歴

大学卒業またはそれと同等以上の教育
国内・海外の大学院・大学・短期大学・高等専門学校(高専)が含まれます。

入国管理局の審査では、学位を取得していることと職務と専攻内容の関連性を大学等の卒業証明書や成績証明書をもとに確認していきます。なお、海外の大学等の中では学位を取得できない学校があるため注意が必要です。

ここで大学等での専攻科目と従事しようとしている業務は関連していれば良いため一致していることまでは求められません(関連性の審査が緩やか)。

専門学校

日本の専門学校(専門士)のみが対象となります。

専門学校の卒業者は大学等の卒業者よりも「専門学校での修得科目」と「従事しようとする業務」との関連性を厳しく審査されます(関連性の審査が厳しい)。

実務経験
  • 技術・人文知識に関連する職務の場合:10年以上の実務経験
  • 外国人ならではの思想・感受性に関連する国際業務:3年以上の実務経験(大学を卒業した人が翻訳・通訳・語学指導をする場合は実務経験不問)
10年以上の実務経験が必要な場合

最終学歴が高校(High School)卒業の場合など、職務に関係のある大学等または専門学校の卒業をしていない場合には、技術・人文知識に関連する職務の場合には10年以上の実務経験が必要です。この10年間には、大学や高校等でその技術などの専門分野に関連する科目を先行した期間を含みます。

実務経験の証明は、過去に勤めた会社での在籍証明書などの書類を集めて立証する必要があるため、円満退社をしていないなどでそれらの書類を集めることができない場合には実務経験が証明できず、在留資格を取ることができなくなる場合があることには注意が必要です。

3年以上の実務経験

また、外国人ならではの思想や感受性が必要とされる国際業務には3年以上の実務経験が必要です。大学を卒業した人が翻訳・通訳・語学指導をする場合は実務経験不問であることはポイントです。

例えば、美術やスポーツ体育を専攻した大卒者であっても、翻訳や通訳、語学学校の教師であれば実務経験なしで従事することができます。

(3)給料の水準

同じ会社に勤めている日本人の従業員と同じ給料水準を支払っていなければなりません。採用当初は、日本語能力の問題などで十分なコミュニケーションを取ることができないなどのハンディキャップがあることも想定されますが、だからと言って日本人よりも給料を低く設定することは許されません。

大卒新卒者であれば、その会社の日本人の大卒新卒者と同等として簡単ですが、専門職研究職などでの中途採用であれば、その人の学歴や職歴、ポストの有無によっても異なるため、その会社の給与テーブルや実際の給料を参考にします

なお、給料の水準は、賞与(ボーナス)などを含めた1年間従事した場合に受ける報酬を12分の1として計算します。

この場合、報酬とは「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」 をいい、通勤手当、扶養手当、住宅手当等の実費弁償の性格を有するもの(課税対象となるものを除きます。)は含みません(入国管理局ガイドライン)。

(4)会社と外国人の間で雇用契約等の契約があること

「会社と外国人本人との間」で、雇用契約等の「契約」があることが必要です。会社が契約する場合に加えて、個人事業主が外国人を雇用する場合も含まれます。雇用契約の他にも派遣契約や請負契約、業務委託契約など含まれますが、特定の会社等と継続性が見込ませるものでなければなりません。

既に就職が決まっていることの証明として、雇用契約書や内定通知書等を入国管理局へ提出することになります。そこには(3)でみた労働条件等を記載している必要があります。(雇用契約書のサンプル

その場合、在留資格がまだ許可されておらず、働けるかどうかがわかりませんので、「本契約は日本政府による就労可能な在留資格の許可または在留期間の更新を条件として発効する」といった条件をつけておくことが一般的です。

(5)会社の経営状態

採用しようとする外国人を安定的継続的に雇用するために、採用する会社の経営業態が安定していることが求められます。経営状態については、実際の審査では決算書等を証明資料として提出します。

なお、企業は、その企業規模等に応じて、カテゴリー1から4までに区分されています。カテゴリー1は上場会社、カテゴリー2は人件費を概ね年間1億円以上くらい支払う中堅規模以上の未上場企業、カテゴリー3はそれ以外の中小企業や零細事業者、カテゴリー4が新設会社のイメージです。

カテゴリー1と言われる上場会社などでは、ほとんど問題にはなりませんが、カテゴリー3の中小企業で、かつ、業績が赤字決算である場合などは、雇用の安定性継続性が見込めないのではないかということで、審査が厳しくなる傾向があります。その場合、事業計画書を添付して経営状態について追加の説明を行う必要が生じます。

また、新しく立ち上げた会社の場合は、決算をまだ行っていないので、事業計画書の提出が必須となります。
各カテゴリーで入国管理局へ提出する資料の一覧は左記のリンクをご参照ください。

(6)外国人の素行が良いこと(前科や法令違反がないこと)

外国人本人の素行が善良であることが前提となります。つまり、本国で重大な犯罪を犯していたり、国内で犯罪行為を犯していないこと、法令を遵守していることです。例えば、オーバーステイをしていないか、留学ビザで日本に滞在している留学生では、アルバイトの就労時間制限(週28時間)の遵守などには注意が必要です。また、離婚して在留資格が変わった場合などの在留カードの記載事項に係る届出、転職をした場合などに所属する機関等に関する届出などの義務を履行していることが必要です(入国管理局ガイドライン)。

不許可事例のケーススタディ

不許可事例を見てみましょう(入国管理局HPより抜粋)。

専修学校(日中通訳翻訳学科)を卒業し,専門士の称号を付与された者から,本 邦の漆器製品の製造を業務内容とする企業との契約に基づき,月額12万5千円の報酬を受けて、中国語翻訳・通訳、漆器の塗装補助業務に従事するとして申請があったが,通訳・翻訳業務については,それを主たる活動として行うのに十分な業務量があるとは認められないこと,漆器塗装は自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするものとは認められず,「人文知識・国際業務」、「技術」 のいずれにも当たらないこと、申請人と同時に採用され,同種の業務に従事する新卒の日本人の報酬が月額17万円であることが判明したため,日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けているとはいえないことから不許可となったもの。

このケースでは、入国管理局からは、①中国語の翻訳・通訳は業務量が少なく翻訳通訳は主たる業務と認められないこと、②漆器塗装補助は専門的な技術や知識を活かしたものと認められないこと(=申請した漆器塗装補助の業務は単純労働とみなす)、③そもそも日本人従業員よりも大きく給料も低い、といった典型的な不許可事例です。
※ご参考:不許可になってしまった場合の対応策

もしもですが、このケースで、1)日本でMBAを取得した中国人留学生に漆器製造の老舗業者が、製品の中国への輸出拡大のためのマーケティング業務及び営業を、2)日本人と同等以上の報酬を支払って、申請する場合には許可される可能性が高いかと思われます。もちろん、後付けの理由でなく業務実態を伴っていることが前提です。

イメージはつかめましたでしょうか。

次回Lesson3:では調理人の採用などで必要な技能ビザの要件について見ていきます。

この記事を書いた人

村井将一(むらい まさかず)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券(三菱UFJフィナンシャルグループと米モルガン・スタンレーとのジョイントベンチャー)で企業の資金調達やM&Aなどのアドバイスを行う投資銀行業務に従事。在職中、現場業務に従事しながら従業員組合中央執行委員として職場内の外国人や女性の活躍などのダイバシティ推進、労務環境改善活動に従事。専門は外国人の在留資格手続きに関わるコンサルティング及び財務コンサルティング。入国管理局申請取次行政書士・CFP(Certified Financial Plannner)・日本証券アナリスト協会検定会員

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