経営管理ビザ:外国人留学生が起業する場合の注意点
日本に留学中の外国人です。大学等を卒業後(中退して)日本で起業したいのですが経営管理ビザは取れますか?
留学生が経営管理ビザに変更しようとする場合、起業の動機、事業計画、法令遵守や学業の状況、資本金の出所などが、経営管理ビザ審査のポイントになります。
外国人留学生の経営管理ビザへの変更は厳しく審査される
留学生が卒業後に起業して会社経営をするため、経営管理ビザへ変更したいという相談を多く受けます。
しかしながら、留学生は、多くの場合、行おうとする事業についての実務経験が無かったり、企業経営の経験が無かったりします。また、就職先が決まらないものの、引き続き日本には滞在したい(ビザだけ欲しい)、外国人の恋人を引き続き日本に居させたい(ビザだけ欲しい)などの理由から、経営管理ビザへの変更を希望する者も存在するため、入国管理局では、通常の社会人による経営管理ビザへの変更申請よりも厳しく審査がされる傾向にあります。
したがって、留学生から経営管理ビザへの変更申請を行う場合には十分な準備が必要です。
大学等を中退する場合は合理的な理由、明確な事業計画が必要
経営管理ビザは学歴の要件が無いため、大学等を中退して新たに事業を始める事も可能です。ただし、大学等を中退して、経営管理ビザに変更して、起業をする場合、日本で勉強をするために留学したのに、学位取得前に中退して起業することの合理的な理由が必要となります。
「もう学校に行きたくないけども日本には居たい、または、卒業できないのでとりあえず起業することにして学歴や職歴の要件の無い経営管理ビザを取得しておこう」ということはできません。
例えば、本国の大学を卒業してから本国で就職し一定の社会人経験を経て、日本の経営大学院(MBA)へ留学に来ている場合などは、日本で自身の得意分野に関係する起業機会を見つけ、今が起業するタイミングであるという論理が成立します。しかし、本国の高校から日本の日本語学校を経て日本の専門学校や大学へ留学中である場合などでは、当初の留学の目的が未だ達成されていないことに加え、事業の経験もないことなども指摘される可能性があります。
また、始めようとする事業の事業経験がない場合は、事業の継続性・安定性が問題となりますので、事業の継続性安定性を証明するためにしっかりとした事業計画書を提出し説明をする必要があります。この場合、学校での専攻分野、職歴、家庭環境など、可能な限り事業を経営していくに相応しい経歴があると説明しやすいです。
なお、大学等を中退してから経営管理ビザの申請まで正当な理由なく3ヶ月以上期間があいてしまうと、留学ビザでの在留活動を行っていない状態で日本に在留している在留資格取消事由にも該当してしまう可能性があるため注意が必要です。
資格外活動の状況(アルバイト週28時間以内)や学業の状況も論点に
留学生が、起業資金を貯める目的などでオーバーワーク(週28時間超のアルバイト)をしていた場合には資格外活動違反となり経営管理ビザへの変更は不許可になります。
なお、経営管理ビザの申請中に、学校を卒業し、その間の生活費を稼ぐためにアルバイトをしていると、それが入管当局に知れて在留不良で不許可になる可能性があるので、気をつけてください(留学ビザの期限が残っているうちはアルバイトをして良いと勘違いしている人が多いです。大学等の卒業と同時にアルバイトはできなくなります。)
また、日本語学校や専門学校は出席率が重要で、審査では成績証明書や出席率を証明する書類を求められます。出席率や成績が悪い留学生が「在留状況が悪いので、会社を設立して経営管理ビザを取得しよう」としても「在留不良」という理由で変更の申請は不許可となる場合が多くなります。一度「在留不良」と認定されると、日本に居住しながら他の在留資格への変更は事実上難しくなるため、そのような場合は外国人がいったん母国に帰国して認定申請をすることになります。
大学等に在学中に経営管理ビザを取得できるか
「留学中に留学ビザのまま、会社の経営をすることが出来るか?」という質問を多く受けます。役員報酬を貰わなければ良いのではないかと思いますが、役員報酬を得ることは勿論、新たに法人を設立して事業を営むことも認められません(入管法及び入国管理局コメント)。
他方で、在学中に学生の身分のまま経営管理ビザへ変更をして、会社を経営しながら留学を継続することは認められる可能性があります。事業の経営を行いながら、大学等に通学することは可能であるためです。ただし、経営管理ビザの取得した後に「学校を卒業したら企業経営に専念しよう。それまでは学業を頑張ろう。」などとして、毎日学校に通い専ら学業に専念し、経営管理ビザで定めている会社経営の活動をできない場合は認められません。
したがって、在学中の経営管理ビザへの変更は、大学の4年生や大学院修士2年生で、大学等の単位はほぼ取り終えており、卒業や修了が見込まれるタイミングが現実的です。
経営管理ビザの資本金をどのように工面したか?
また、会社設立に際しての資本金の出所にも留意が必要です。留学生は資格外活動として週28時間のアルバイトは可能ですが、原則就労することが出来ないため、500万円以上の出資金をどのように工面したのかの説明を入国管理局から求められます(上記のようにオーバーワークしていた場合には経営管理ビザへの変更は認められません)。
現実的には本国の両親や親戚等から資金を貸付や贈与で援助してもらうことが多いのですが、その場合、銀行の送金履歴などの送金の流れや両親や親戚等の在籍証明や収入・預金などの経済力を証明する資料が必要になってきます。正規の銀行免許を持たない業者(所謂地下銀行)などを経由した送金は、原則は認められませんので注意してください。なお、国によっては書類の収集などに時間がかかったり、留学生は事業所不動産を借りるのに時間がかかる場合もあることから(貸主が貸してくれない)、通常の人よりも、余裕を持ったスケジュールが必要です。
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スケジュール
日本の大学等の卒業時期は3月ですので、留学ビザもその直後の5-6月くらいの時期に切れると思います。一方で、経営管理ビザを申請するためには、事業計画書を作成し(数週間から1ヶ月くらい)、会社を設立(2週間から1ヶ月くらい)、事業の許認可が必要な場合はそれも取得するので、学校卒業の3−4ヶ月前くらいには準備を開始するのが良いと思います。
なお、経営管理ビザの審査期間は、現在2〜3ヶ月くらいかかっています。案件によっては3ヶ月以上かかることもあります。ちなみに当事務所では留学生→経営管理ビザを最短で1.5カ月(GW10連休込み、正味1カ月強)で取得した実績があります。依頼された方や入国管理局の状況等にも拠りますのが、審査長期化、不許可リスクを本人申請より200%以上低減させ、できる限り早い許可取得を目指していきます。
留学生も多数!たくさんの成功事例
○留学生から経営管理ビザへの変更、ITアプリ会社の起業
○高度専門職1号ロ(IT技術者)の会社設立、副業でIT開発起業
○高度専門職1号イ(研究者)からの永住申請→研究に関係ない分野で起業
○技術・人文知識・国際業務(旅行業)から経営管理ビザ取得、旅行業で起業
○日本で起業するための経営管理ビザの認定取得(貿易業、不動産業、旅行業、製造業等)
○外国人起業家の創業融資アドバイザリー
○日系中小企業・ベンチャーの財務アドバイザリー
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○構造的赤字からの経営管理ビザの更新
○債務超過からの経営管理ビザの更新○上場企業における外国人取締役の招へい
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(人材紹介会社、日本語学校、建設会社、飲食チェーン、医療法人など)
この記事を書いた人
村井将一(むらい まさかず)
外国人専門起業支援プロデューサー。
~外国人の起業ビザから資金調達までスタートアップを徹底的に支援~
起業のためのビザの不許可・審査長期化のリスクを専門家が極限まで低減。
1977年生まれ。三菱UFJモルガン・スタンレー証券(三菱UFJフィナンシャルグループと米Morgan Stanleyのジョイントベンチャー)で企業の資金調達やM&Aなどのアドバイスを行う投資銀行業務に18年間従事。在職中500人を超える起業家や上場企業経営者に対して事業計画や資本政策などの財務・資本戦略についての助言を実施
専門は外国人の在留資格手続きに関わるコンサルティング及び財務コンサルティング。趣味は、日本人アイドルのコンサートとディカプリオ映画と猫と遊ぶこと
入国管理局申請取次行政書士・CFP(Certified Financial Planner)
日本証券アナリスト協会検定会員
【外国人のみなさま】
◆ 日本で働きたい
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◆ 入国管理局への申請をしてほしい