高市政権が打ち出した外国人政策見直しパッケージ ― 概略と評価
高市政権が打ち出した外国人政策見直しパッケージ ― 概略と評価
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高市早苗内閣は日本の外国人政策の包括的見直しの方針を打ち出しました。政府・与党から正式な政策パッケージとして公表されたものはまだ一部ですが、報道・政府発表などから主要な論点が明らかになってきています。
【ポイント】
・基本コンセプト:外国人との秩序ある共生社会
・量的マネジメントの検討
・永住許可の審査厳格化
・帰化許可の審査厳格化
・技術・人文知識・国際業務ビザの厳格運用
・自治体、厚労省などと入管の情報連携
・オーバーツーリズム対策
・外国人による不動産取得規制
1|政策の目的と基本理念
高市政権は、外国人政策見直しの根幹に “制度の適正化” を据えています。その背景には、以下のような世論や認識があると思われます。
- 在留外国人の増加が進む中で、日本社会の受け入れ余力や地域社会との調和を確保する必要があること。
- 外国人政策を「労働力確保」重視から、**「日本社会との共存・秩序の維持」**へと再設計すること。
- 外国人対応を安全保障や治安維持と関連付けて考える必要性。
2|受け入れ管理の「量的マネジメント」導入
連立政権は、在留外国人について「数値管理の仕組み(量的マネジメント)」も検討しています。
- 在留外国人比率が一定水準を超えた場合の総合方針や上限設定の導入の検討(従来より特定技能などの一部の在留資格では上限設定がなされていた)。
- ちなみに、OECDではオーストラリアやカナダが技能移民・家族移民・人道移民ごとに人数枠を明示するなど年間受入数を政府が決定する量的マネジメントが行われています。フランスでは、労働移民については、分野・職種別に受入れ数の目安を設定しています。
3|在留資格・定住条件の見直し
高市政権は、在留資格の条件や運用の厳格化を進める方向で法務大臣に指示・調整している。
3-1|永住許可・帰化(国籍取得)条件の強化
- 永住許可(永住権ではない)の申請条件の見直しに向け、日本語能力や在留期間の厳格化、経済的自立(最低収入水準の明確化)や法令遵守の基準強化が論点として浮上しています。
- 帰化要件についても、現行「5年以上の在留」から 10年以上への引き上げ が政府内で検討されているという報道があります。国籍法の改正はもとより、条文改正より先に、居住年数・納税・社会保険など運用面での厳格化が先行する可能性が高く、実務上は2026年から審査が難化する見込みです。
3-2|「技人国」や在留資格の運用見直し
- 技術・人文知識・国際業務(いわゆる“技人国”)などの資格で、制度趣旨に反する働き方があるとして 審査・運用の厳格化 が検討(報道)
4|不法滞在・在留管理の強化
- 不法滞在者への取り締まり強化: 不法就労・不法滞在に対する摘発を強化する方針がある。高市首相は不法滞在者ゼロプランの強力推進を法務大臣に指示しています。
- 行政のデジタル連携(マイナンバーなどを通じた市区町村などと入管との情報連携)による在留管理精度の向上を検討。
5|社会制度との整合性・負担の設定
政府は、外国人が利用する社会保障・医療等に関しても、制度負担の適正化を課題として位置付けています。
- 医療費の未払い問題に対応するため、保険加入や支払いの管理を強化。
6|住民統合・地域社会との共存強化
政策見直しは単なる受け入れ抑制ではなく、地域社会との融和に向けた取り組みも掲げている。
- 日本語教育や地域社会での統合支援の拡充 を盛り込む方針が伝えられている。
- 外国人児童の教育支援など、生活基盤での調整にも言及あり。
○ 米欧先進国は深刻な移民問題を抱え、暴行や略奪などの治安の悪化がメディアに取り上げられることも少なくありません。日本がそこまで酷くないのは「日本語バリア」です。日本人が英語ができないおかげで、日本社会に英語がなじんでいないため「バリア」が機能しているのです。
○ 米欧をはじめ世界の多くの国が母語+英語でコミュニケーションをしています。ドイツもフランスもロシアも中東諸国、南アジア、アフリカ諸国なども原則英語でコミュニケーションができるため、米欧先進国と途上国との間に流動性が生まれます。たまに日本は島国だからだという論調があります。しかし、同じ島国のイギリスや豪州でも移民問題が深刻化していますが、日本は米欧と比較すると未だそれほどでもありません。
○ したがって、日本語での社会生活を求める外国人の在留制度改革が検討されていますが、これは日本の文化と社会秩序を守らんとするものでもあるのです。
7|土地所有・不動産管理の新ルール
日本では外国人による土地取得についても議論が進んでおり、登記時に国籍情報の記載を求めるなどの措置を公表しているという報道があります。
評価・批判/国際的な反応
この方向性には賛否があります。与党内では「社会秩序の維持と透明性確保」と評価する声がある一方、野党を中心に「排外主義的」「労働力不足への対応が遅れる懸念」など批判的な見方も出ています。
なお、OECDやG7諸国の直近の外国人政策動向を見ると、「高度人材の奪い合い」と「高度人材以外、とりわけ経済難民と目される層の受け入れには慎重の姿勢」の2つのポイントが見受けられます。例えば、高度人材に対しては求める母国語の水準を引き下げる一方で(英国など)、経済難民についての規制を強化しています(EU諸国など)。オランダでの移民の属性別に経済効果を測定した論文が一部で話題になりましたが、そこでは高給で働く外国人駐在員などのビジネス層が消費や産業活性化などの経済効果をもたらし老後も母国に帰ってくれ社会保障費があまりかからない一方で、経済難民層は入国後もなかなか仕事に就けないなどで社会保障費用の分だけ経済効果としてはマイナスになるという内容です。最近のOECD諸国の政策はこのような経済的な側面も在るとされています。
新刊:村井将一著「外国人起業支援ハンドブック」日本法令社より2025/8/21発売
この記事を書いた人
村井将一(むらい まさかず)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券(三菱UFJフィナンシャルグループと米Morgan Stanleyとのジョイントベンチャー)で企業の資金調達やM&Aなどのアドバイスを行う投資銀行業務に従事。
在職中、現場業務に従事しながら従業員組合中央執行委員として職場内の外国人や女性の活躍などのダイバシティ推進、労務環境改善活動に従事。専門は外国人の在留資格手続きに関わるコンサルティング及び財務コンサルティング。
行政書士、東京都行政書士会 港支部 副支部長
CFP・日本証券アナリスト協会検定会員
【外国人のみなさま】
◆ 日本で働きたい
◆ 日本で会社を作りたい
◆ 結婚したい
◆ 永住したい
◆ 日本国籍をとりたい
【事業主のみなさま】
◆ 外国人を雇いたい
◆ 入国管理局への申請をしてほしい





















