外国人在留状況速報!留学生はどこへ?
外国人在留状況の概括(2020年6月末)
入管庁より2020年6月末時点の日本に在留する外国人の状況が公表されました。2020年6月末の在留外国人数は、288万5,904人で,2019年末比47,233人の減少(同1.6%減)となりました。在留外国人数は、現行の集計方法となった2012年末から7年連続で増え続けており、2019年末は過去最高となっていました。なお、在留外国人数が前年比で減少する事象は、リーマン・ショック及び東日本大震災による原発放射能問題の影響があった2009年から2012年以来です。(ご参考:新型コロナによる外国人(労働者)への影響)
2020年6月末の在留外国人数の内訳を見ると、在留資格別では「永住者」が800,872人(前年末比7,708人増/同1.0%増)と最も多く、次いで「技能実習」が402,422人(同8,550人減/同2.1%減)、「技術・人文知識・国際業務」が288,995人(同16,996人増/6.2%増)、「特別永住者」309,282人(同3,219人減/1.0%減)、「留学」280,273人(同65,518減/同18.9%減)と続きます。
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri04_00018.html
※詳細の統計数値は入管庁ウェブサイトご参照
今般の在留外国人総数の減少要因の大きなものを見ていくと、特に留学生の数が2019年末比約2割減(65,518人)となり、全体への大きな影響を与えています。これは、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、日本政府の海外からの入国拒否政策によって新規の入国が止まったため、新入生が上陸できないのに併せて在学期間満了での卒業や中退によって、留学の在留資格の人たちが当該在留資格ではなくなったことに起因します。
なお、技能実習は、総数では少ない減少幅(同8,550人減/同2.1%減)に留まっていますが、内訳を見ると技能実習1号(技能実習の1年目)が大幅に減少、日本の人手不足を背景に2019年まで急増していた実習生人数がそのまま2号、3号へ移行しているため、集計時点の定点では(未だ)大幅な減少は見受けられません(※コンチネンタル・リサーチ&コンサルティング株式会社では、これから大きな減少局面を迎えると考えています)。
その他の在留資格では、外国人の芸能関係者やスポーツ選手(興行)、外国企業からの駐在員等(企業内転勤)や大学等の職員(教授)、文化活動をしていた人たち、などがCOVID19に起因して出国している傾向が見受けられますが、これらはセグメント上の減少幅が比較的大きく当該属性の傾向は読み取れるものの、その数はともに僅少であり、外国人在留者総数全体へのインパクトは大きくはないものです。
外国人留学生はどこへ行ったのか?
テレビニュースや雑誌の記事で、コロナ禍で就職ができずに困窮する留学生、アルバイトが無くなり困窮する留学生について報じられることをよく目にします。大幅に減った留学生6.5万人はどこへ行ったのでしょうか?
日本に在留する外国人は全員、今般の入管庁に統計数値の中のどこかの項目に入ってます。留学生は、学校に通学している最中は、留学の在留資格となります。卒業後は、①日本で就職(技術・人文知識・国際業務や高度専門職の在留資格などに変更)、②就職活動を継続(一時的に特定活動の在留資格になる)、③結婚などをする(日本人/永住者の配偶者等や家族滞在などの在留資格へ変更)、④母国に帰国(この統計のカウントから外れる)、のいずれかになるはずです。
①の日本での就職は、就労系の主たる在留資格である技術・人文知識・国際業務が16,996人増、高度専門職1号が1,262人増、合計で1.8万人くらい増加しているため、留学生からの当該在留資格への変更は一定程度あるものと推定されます。独立行政法人日本学生支援機構によると2019年の外国人留学生の内訳は、日本語学校8.3万人、高等教育機関22.8万人、うち学部及び大学院生(合計約14.2万人)となっています。なお、民間調査会社のアンケートでは2019年7月時点での外国人留学生のである大学生・大学院生の内定率は40.6%(日本人の学生は同80.4%)とされています。コンチネンタル・リサーチ&コンサルティング株式会社では、当該期間の入管申請業務等の状況も鑑み、大学院や有名大学の学部留学生とそれ以外の大学や専門学校等の留学生で大きく状況が異なるものと推定しています。
②の就職活動を継続する場合、特定活動の在留資格となります。特定活動の在留資格は7000人の増加となっています。特定活動は、就職活動意外にも、通常の在留資格に該当しない様々な状況の人たちが含まれているため全てが就職活動ではありませんが、就職できなかった留学生で在留資格の期限が切れた人が一定程度の割合で存在することが考えられます。
③の結婚は、存在はすると思いますが、当該期間に配偶者ビザへの変更した人の僅少であると思われます。
④そうなると、残りの人たちは在留資格を喪失して/させて帰国した計算になります。新型コロナウィルスの感染拡大に伴い母国へ帰国したいという心情的要因、留学生の就職先として大きなウェイトを占めていたインバウンド関連業種(旅行、宿泊、小売など)での雇用環境が急速に悪化したこと、留学の在留資格で就労を目的として在留していた人たち(所謂偽装留学生)の働く外食や現業系職種での雇用環境が急速に悪化したこと、の複合的要因とみています。
実際の現場の状況(ミクロ的視点)で見てみると、母国へ帰国したいという要因では、実際に台湾や中国本土出身の学生による就職内定辞退は多く見受けられました。これは学生本人が「(危険地域指定された)日本に一人でいると怖い」と感じている場合と、母国の両親などが「早く家に帰ってくるように」と強く勧めている場合がありました。統計数値においても、台湾、中国及び米国出身の在留者の減少幅が大きいことも読み取れます(ただし、企業内転勤や教授など全ての在留資格を含みます)。
雇用環境の悪化では、旅行業や宿泊業、小売などのインバウンド関連事業がほぼ完全に開店休業状態に追い込まれたことは周知の通りで、最近、統計数値どおり、飲食店で外国人の店員さんを見かけなくなってきたのではないでしょうか。
コンチネンタル・リサーチ&コンサルティング株式会社では、サプライチェーンや経済環境、リーマンショック時の先行事例を鑑み、今後の外国人在留状況の予想を行なっていきます。
コンチネンタル・リサーチ&コンサルティング株式会社
代表取締役 村井将一
日本証券アナリスト協会検定会員、行政書士
この記事を書いた人
村井将一(むらい まさかず)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券(三菱UFJフィナンシャルグループと米モルガン・スタンレーとのジョイントベンチャー)で企業の資金調達やM&Aなどのアドバイスを行う投資銀行業務に従事。在職中、現場業務に従事しながら従業員組合中央執行委員として職場内の外国人や女性の活躍などのダイバシティ推進、労務環境改善活動に従事。専門は外国人の在留資格手続きに関わるコンサルティング及び財務コンサルティング。入国管理局申請取次行政書士・CFP(Certified Financial Planner)・日本証券アナリスト協会検定会員
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