証券会社も行政書士も同じ。その2
僕が証券会社で学んだことの一つがプレゼンテーションです。プレゼンテーションとは、簡単に言うと「人にわかってもらい」その上で「口説く」ことです。だから、日常が全てプレゼンテーションでもあるわけです。
(証券会社のプレゼンテーション)
- 投資家に株式や債券を買ってもらうための長い時間(1時間くらい)をかけた説明
- それを一瞬で理解してもらうための超短い(1-2分)説明
- 独自の考え方を持っているオーナー社長を口説き落とすために波状攻撃的に日数をかけてじわじわと理解していってもらうような説明(6か月)
- そのためのステップ(城攻め前に外堀と内堀を埋めにいく説明)
- 感情的な上司・顧客のための説明
- ものすごく頭の良いロジカルな上司・顧客への説明(これが一番難しい)
- 理解度の薄い初心者向けの説明
- ストレスやプレッシャーがかかってイライラしたクライアントへの説明
- 「君に任せるよ」と実質委任を受けたような状態下での説明
証券会社では、様々なタイプのプレゼンテーションを体感しました。
頭の良いスマートな人が多く、脳内で三手先まで予見できているのか、自分には真似できない素晴らしく洗練されたプレゼン(説明&口説き)をしているのを横目で見ると、その人の才能を羨ましく感じたものです。
プレゼンテーションの目的は?
上記のように、プレゼンテーションには、様々異なる相手や状況、時間があります。一瞬で理解して判断してもらわなければいけないのに長時間をかけたら逆効果です。まとまるものも纏まりません。また、論理派の人に丸腰で行くのも逆効果です。そして、それぞれに目的が異なります。
例えば、入国管理局への説明の目的は、「本件の在留資格の許可をしてもらうこと」です。
それ以外にはありません。したがって、資金調達のために金融機関に出すのでもなく、区役所に出す形式上の届出のようなものでもなく、示談を交渉するようなものでないことは、理解しておくべきです。
プレゼンテーションの相手は?
プレゼンテーションは愛です。相手のことを思って、どう伝えたらわかってもらえるのかを考えるべきです。恋愛と同じですが、さすがに、異性の歓心を引くよりも難しくはないでしょう。女心は未だに未開の地です。
話は逸れましたが、したがって、入国管理局への説明も、顧客の属性や状況に併せて、適切に設定し、その魅力や訴求ポイントを、多忙な審査官にわかりやすい論理構成やストーリーで説明していくことが重要だと思っています。
例えば、審査官は事業や財務のプロではありませんので、なるべくわかりやすい表現で説明をして理解を得る必要があります。汚い文字で何と書いてあるか分からない、書類の写しを写メで撮影して曲がっていてかつ不鮮明で分からないなどは論外です。(=これは、自画自賛の自慢のようになってしまうのですが、過去の実績だけを見ると私の関わった案件は短期間に許可していただくことが多いと思います。宣伝臭くなりますが、事実ですのでご容赦ください・笑)。
プレゼンテーションの時間(量)は?
故に量も問題になります。塩加減と同じでセンスや食べる人(聞き手)の感じ方もあります。多すぎると濃いですし、少なすぎると味がしない。でも、同じ量であっても、濃いと感じる人から薄いと感じる人までいます。料理の味が、その料理人個人の腕に依拠するのと同じく、プレゼンテーターに依拠します。
入国管理局への申請では、1時間に何件も審査することもある担当官の人たちには短時間で理解できるように、共感を得れるように工夫をしなければいけません。
プレゼンテーションはアート?
プレゼンテーションはアート作品に近いものではないかと考えています。話し手の人間性や品性、知識や知恵、技術や経験、そう言うものが総合的に出てくるものではないでしょうか。
さらに、有名高級店の料理や風情のある店での一品が一際美味しく感じられるように、同じことを言うにしても誰が言うかもによっても聞き手には変わってくることも事実ですし、聞き手によっての感じ方も十人十色でしょう。
したがって、万能なプレゼンテーションと言うものは無く、説明する側の現時点の能力にも依拠する訳でありますが、上記のようなポイントを考えながら自分のできうる限りを尽くして説明するように心がけています。
続く。