赤字・債務超過の会社でも外国人従業員を採用できる?(就労ビザに関するポイント)
赤字継続や債務超過の会社でも外国人の従業員を採用できますか?就労ビザは取れますか?
事業計画書や疎明資料で、入国管理局へ外国人雇用のための事業の安定性・継続性などをしっかり証明できれば可能です。
赤字や債務超過でも外国人を雇用できるか?
技術・人文知識・国際業務などの就労ビザで外国人の従業員を雇用しようとする際、入国管理局は企業の財務健全性を審査します。雇用主が外国人従業員に安定した給与を支払い、日本での安定的な生活を保障できるかどうかが焦点です。
特に、2期以上など連続して赤字決算を出している企業や債務超過の企業は、財務健全性に疑念があるとして、その説明が必要です。
ベンチャー企業や中小企業の財務状況について
他方で、
- スタートアップやベンチャー企業は、資本金が少なく赤字額が大きくない場合でも債務超過になることがあります。
- 開発型ベンチャーでは、売上が立ち上がる前に研究開発投資が先行し、赤字が続くケースも少なくありません。
- 減価償却費や引当金の計上により、一時的に債務超過となることもあります。
事業計画書で事業の安定性・継続性を説明
継続して赤字や債務超過の状態にある企業は、入国管理局に事業計画書を提出し、事業の安定性・継続性を説明する必要があります。特に、規模の小さいベンチャー企業ほど、詳細な説明が求められる傾向にあります。事業計画書には以下のポイントを盛り込むことが重要です。
- 赤字や債務超過が続く理由
- 現在の損益や財務状況、赤字でも事業が継続できる理由
- 赤字や債務超過が解消される見込み(第三者割当増資の予定など)
これらの情報を、入国管理局の担当官が理解しやすいように簡潔かつ合理的に説明することが重要です。また、事業継続に必要な現金の保有状況やキャッシュフローの説明も必要になることがあります。
なお、入国管理局への説明は、口頭で説明する機会はないため、証明の全てを事業計画書などの文書と証拠書類(疎明資料)で証明しなければなりません。事業計画書に明記していなければならないポイントは、大きく以下の3点です。
①赤字が継続している理由(債務超過となった理由)
②現在の損益財務の状況と赤字や債務超過となっても事業が継続していける理由
③継続的な赤字や債務超過が解消する見込み(第三者割当増資の実施を含む)
以上の点を、経営・財務分析の専門家ではない入国管理局の担当官に簡明に、かつ、合理的に、説明をすることが肝要です。説明の方法は、銀行員や投資家に説明するのとも違います。必要な現預金の水準、キャッシュフローの状況、もしくはデット・エクイティ・スワップや債務免除益の計上についてなど、会計論点に関する初歩的説明が必要になる場合もありえます。
他方、ベンチャー企業や中小企業は、事業計画は社長の頭の中にあり、外部に示す事業計画書を特には作っていない場合が多くあります。また、事業計画書や会計や財務には明るくない経営者も多く、また、自ら作成しても入国管理局の審査官を納得させられない可能性もあります。
事業計画や企業財務を人に説明するのはどのくらい難しいか?
筆者は銀行と証券会社で、事業を評価する側として、1,000社近くの中小企業の事業計画書を見てきましたが、読んでみて理解や納得が得られるケースは少ないです。金融機関からみて、作成された事業計画書が合格点に達するベンチャー・中小企業は10社中2−3社くらいです。
大半は「書類を見ても趣旨がわからない。」「主張していることに合理性やエビデンスがない」「計画書を書いた経営陣が制度や財務を十分に理解していないと感じる」などです。
銀行等の場合は、経営者から直接話を聞くことで不明な点がクリアになりますが(嘘やいい加減なことを言っている場合はわかります)、入管当局の場合、面談の機会はないので全て文書と証拠書類で判断することになります。
特に、書き手が制度や財務などについての理解が間違っていると感じられる場合(用語の使い方などを含め)などでは、担当官の心証は相当に悪くなることも考えられます。誤解され不許可と判断されてしまう可能性もあります。その場合、審査が長期化し、結果として不許可になり、会社の採用計画が大きく狂ってしまうことになりかねません。
事業の実態等を示す証拠書類(疎明資料)
外国人を雇用する企業の安定性と継続性を示すためには、事業計画書で説明することが必要ですが、事業計画書は、その根拠に何ら証明があるわけではありません。
経営管理ビザにおいて、外国人が経営する会社が継続して赤字であったり債務超過の場合には、公認会計士等の第三者の専門家の意見書が求められますが、日本企業の雇用主にはそこまでは求められません。
したがって、例えば、案件を受注したことや今後の収入の見込みがわかるクライアントとの基本契約書などの書類、第三者割当増資が実行されたこと/またはその実現可能性がわかる書面、オーナー経営者から会社への貸付の状況やオーナー経営者の個人財産に関する書類などの証拠書類の提出も必要になることがあります。
また、事業計画書における外国人に就かせる予定である業務の事業規模、それらの証拠書類などをもとに外国人がそれに専ら従事できるだけの業務量が確保できていることも確認されます。したがって、事業の内容や企業ごとに主張立証するための証拠書類の種類は異なってきます。
ベンチャー・中小企業向け外国人雇用サービス
コンチネンタルでは、入国管理局の審査をクリアするための事業計画書作成と、投資銀行の知見を活かした証拠書類の準備をサポートしています。スタートアップやベンチャー企業、債務超過状態の企業でも、外国人採用を成功させるために必要な対策を提供します。財務コンサルティングも行っていますので、お気軽にご相談ください。
これらのポイントを押さえることで、赤字や債務超過の企業でも、外国人従業員を採用し、ビザ取得の可能性を高めることができます。
プロフェッショナル
村井将一(むらい まさかず)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券(三菱UFJフィナンシャルグループと米モルガン・スタンレーとのジョイントベンチャー)で企業の資金調達やM&Aなどのアドバイスを行う投資銀行業務に従事。
在職中、現場業務に従事しながら従業員組合中央執行委員として職場内の外国人や女性の活躍などのダイバシティ推進、労務環境改善活動に従事。専門は外国人の在留資格手続きに関わるコンサルティング及び財務コンサルティング。
行政書士、東京都行政書士会 港支部 執行役員
CFP(Certified Financial Planner)、日本証券アナリスト協会検定会員
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