外国人が転職をする場合に必要なこと(就労資格証明書)
技術・人文知識・国際業務ビザの外国人が転職をした場合に、必要になるビザ手続きはありますか?
外国人が転職をした場合、転職先での職務内容が前職と異なる場合は「就労資格証明書」の交付を申請しておくことをお勧めします。
就労資格証明書とは
就労資格証明書とは、技術・人文知識・国際業務ビザなどの就労ビザを持っている外国人を、転職などで雇用した場合に、自社で次回の在留資格更新申請が許可されるかどうかを予め入国管理局で審査してもらう制度です。
技術・人文知識・国際業務ビザを持っている外国人を雇用する際、学歴職歴と職務内容が法令要件に合致している場合には、原則として現在の在留資格の在留期限が切れる日までは、特段何も手続きをする必要はなく、そのままその外国人を雇用することができます。
ただし、これは転職前にその外国人が認められた、学歴・職歴と職務内容、給与などの前提条件が、転職後でも引き続き法令要件に合致しており、在留資格の更新が問題無く許可されることを前提としています。
そのため、転職後の新しい職務内容や雇用条件によっては、在留資格の更新が不許可となる場合があります。しかし、前職と現在の職務内容や労働条件がほとんど同じ場合を除き、在留資格の更新が問題無くできるか否かの判断は難しく、実際には数ヶ月から数年先の在留資格の更新申請の結果をもらうまでわからないことになります。
そのため、雇用主が残り2年の就労可能な在留資格を所持する外国人を雇用し、2年後に在留資格更新許可申請を行ったところ現在の職務内容や労働条件が、入国管理局から認められず、不許可となる可能性も考えられます。この場合、雇用主は数年間にわたり法令上就労できない外国人を雇用してしまっていたことになり(法令違反)、さらに、再び代わりの人材を募集したり、再び新しい従業員に一から仕事を教える必要もありえるなど、経済的損失も少なくありません。一方、外国人の従業員にとっても、安定した生活が一瞬で崩れ、新たな求職活動を行わなければならず、精神的にも経済的にも大きなダメージを与えます。場合によっては、不法就労状態であったことが在留不良とされて不許可になりえます。
就労資格証明書はこのような事態を避け、自社での就労内容が法令で定められた活動と一致していることを予め確認するための制度です。
就労資格証明書を取得する場合
就労資格証明書の申請は義務ではありません。あくまでも任意のものであり取得するかどうかは雇用企業の判断次第です。しかしながら、前述したように万が一にも在留資格更新が不許可となると、雇用企業、外国人従業員の双方にとって痛手となるため、安心のためにも就労資格証明書を取得しておくことをお勧めします。
外国人従業員の採用時に就労資格証明書を申請しておけば次回の在留資格更新許可申請時まで安心して雇用することができます。なお、審査には1ヶ月から3ヶ月程度の時間がかかるため、更新期限まであと数ヶ月となった場合には、通常の在留資格更新申請をすることになります。
就労資格証明書を取得する方法
就労資格証明書は、外国人本人(申請人本人)と行政書士や弁護士などの入国管理局から申請の取次が認められた専門家になり、雇用する企業が申請することはできません。
また、注意すべき点は、申請できる場所は、申請人が住む住所の申請人が住む住所を管轄する入国管理局です。転職先の会社の住所を管轄する入国管理局では受け付けてもらえません。現在名古屋に住んでいて東京の会社に転職する人は、転職先の東京でなく、現在住んでいる名古屋で申請する必要があります。
必要書類の例
就労資格証明書交付の申請には、状況により異なってきますが概ね以下のような書類が必要になります。
①就労資格証明書交付申請書
②在留カード
③パスポート
④退職前の源泉徴収票
⑤退職証明書(退職前の会社発行のもの)
⑥学校の卒業証明書
⑦学校の成績証明書
⑧転職先の履歴事項証明書
⑨転職先の決算書の写し(直近1年分)
⑩転職先の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計票
11転職先の定款
12転職先の会社案内・事業所の写真
13転職先との雇用契約書の写し
14雇用理由書(採用に至った経緯や雇用した理由などを記載)
申請時期と審査にかかる期間
転職先が決まった段階でいつでも申請可能です。申請には、退職証明書など転職する前に所属していた会社に発行してもらう書類も必要になってきますので退職が決まった段階で準備をすると良いでしょう。
なお、審査にかかる期間は、標準的には1カ月~3カ月とされています。
日本在住の外国人の方を中途採用する場合や、転職が決まった外国人の方は手続きが必要なのかどうか一度入国管理局や専門家に相談することをお勧めします。
所属機関等の変更の届出もお忘れなく!
転職をして職場が変わったら、転職後14日以内に入管当局に「所属機関等に関する届出手続」も提出する義務があります。こちらも忘れぬように対応してください。
日本にある契約機関の名称・所在地に変更が生じた場合や,契約機関の消滅,契約機関との契約の終了・新たな契約の締結が あったときには,14日以内に法務省令で定める手続により、法務大臣に対し、届け出なければなりません。
この記事を書いた人
村井将一(むらい まさかず)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券(三菱UFJフィナンシャルグループと米モルガン・スタンレーとのジョイントベンチャー)で企業の資金調達やM&Aなどのアドバイスを行う投資銀行業務に従事。
在職中、現場業務に従事しながら従業員組合中央執行委員として職場内の外国人や女性の活躍などのダイバシティ推進、労務環境改善活動に従事。専門は外国人の在留資格手続きに関わるコンサルティング及び財務コンサルティング。
入国管理局申請取次行政書士・CFP(Certified Financial Planner)
日本証券アナリスト協会検定会員
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