美容室で外国人美容師を採用する(美容師は就労ビザを取れますか?)
美容室で外国人美容師を採用したいのですが、採用可能でしょうか?(在留資格・ビザは取れますか?)
外国人美容師のための在留資格が無く、従来は美容室で外国人の採用はできませんでしたが、規制緩和され可能となる見込みです。
外国人美容師の雇用に関する現行ルール
日本の美容室はハイセンス、技術力が高いなどの理由から、将来、美容業界で活躍するために、日本の美容専門学校で学ぶ外国人も多くいます。外国人の留学生は、日本の専門学校で2年間学び、国家試験に合格すれば、日本人の学生と同じように美容師免許を取得できます。
しかしながら、美容師免許を取得しても、美容師として美容室で働くための在留資格が存在しないため、現在は美容学校等を卒業しても、美容師として日本では働くことはできず、原則は母国に帰国することになります。美容専門学校などでメイクアップやネイルを学んだ場合も同様に、美容室で勤務することはできません。
美容師として働くことのできる在留資格(現行)
現行の制度では、外国人で美容師として日本の美容室で働くことができるのは、「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」といった就労分野に制限の無い在留資格を持っている人、および、週28時間以内アルバイトの「留学」または「家族滞在」の在留資格をもつ外国人に限定されています。
「永住者」
「日本人の配偶者等」
「永住者の配偶者等」
「定住者」
「留学」または「家族滞在」でのアルバイト勤務
日本政府の問題認識と今後の方針
日本政府は、美容を通したクールジャパンなどの日本の文化の発信力が低下する懸念、将来日本で活躍するカリスマ美容師の芽を摘んでしまうことで、経済の活性化が阻害される懸念などが、指摘されていました。
そこで、日本政府は国家戦略特区諮問会議(2020年3月)において、日本で美容師免許を取得した外国人留学生が特区で就労できるようにする方針を決め、2021年4月に「国家戦略特別区域外国人美容師育成事業(案)」が関係省庁より公表されました。
なお、この事業は、令和4年(2022年)からの外国人美容師の受入れを目途に関係省庁によって制度設計の調整が行われる見込みです。
国家戦略特別区域外国人美容師育成事業<案>
国家戦略特別区域外国人美容師育成事業では、「国家戦略特区に定められた地方自治体」によって認定された育成計画に基づき、「指定された美容業務」を「特定された美容室(美容所)」で行う場合に、外国人美容師に対して「特定活動(特定美容活動)」という在留資格を認めるというものです。
「最長5年」の育成期間が認められ、「1つの美容所あたり3人以内」の外国人美容師を受入れて「育成」することができるようになる見込みです。
ただし、外国人美容師に対して、日本人と同等額以上の給与を支払う必要があるほか、その雇用(契約)に際しては、「外国人美容師」と「雇用主の美容室」の他に「監理実施機関」という第三者機関も関与するなど在留資格「特定技能」のような複雑かつ厳しい規制が課されており、実際に美容室で運用できるかどうかには留意すべきです。
※詳細は上述の通り「目下、関係当局によって調整中」です。
美容室(育成機関)の要件
美容室(育成機関)は、以下の要件を満たす必要があります。また、美容室は、外国人美容師の実践的な「育成計画」を策定し、自治体から認定を受けることが求められます。「育成計画」は、育成機関、在留中の住居の確保、日本での生活支援&相談受付、報酬・社会保険への加入、費用の負担、美容業務以外の業務(物販、客引き等)を行わせない旨の誓約などの項目を盛り込むとされています。
1.美容室の店舗(美容所)が事業実施区域にあること
2.美容師法に規定する管理美容師を配置していること。
3.健全かつ安定的な経営状況であると認められること。
4.労働に関する法律の規定及び社会保険に関する法律の規定を遵守していること。
5.所定の犯罪歴、法律違反歴、破産歴、反社会的勢力との繋がりなどの欠格事由に該当しないこと。
就労する外国人美容師の要件
美容師養成施設で美容師に必要な知識及び技能を修得した者のうち、次の要件を全て満たし、美容師養成施設の推薦を受けて特定美容活動を行うものをいう。
(1)美容師養成施設において美容に関する業務に従事するために必要な知識及び技能を修得し、成績優秀かつ素行が善良であること。
(2)美容に関する知識及び技能を高めようとする意思、及び帰国後に、日本式の美容に関する技術・文化を世界へ発信する意思を有すること。
(3)N2程度以上の日本語能力があること
(4)満18歳以上であること
(5)美容師免許を取得している者(育成計画の申請日時点においては、美容師免許を取得する見込みがある者)。
従事できる業務
以下の業務に従事することができます。しかしながら、実践的な美容に関する知識及び技能を必要としない業務または同一の作業の反復のみによって習得できる単純作業には従事する事ができません。
(1)シャンプー
(2)カット
(3)トリートメント
(4)ブロー
(5)セット・アイロン
(6)カラー
(7)パーマ・縮毛矯正
(8)ヘッドスパ
(9)まつげエクステンション
(10)ネイル
(11)エステティック
(12)着物着付け
(13)メイク
(14)洋装ブライダル
(15)出張美容
(16)美容所の経営管理に関すること
(17)その他関係自治体が必要と認める業務
(18)その他付随業務
コンチネンタルの総合所見
今回の制度案は、特定技能の在留資格に似た、極めて複雑で厳しい条件が設定されています。したがって、これまで外国人スタッフを雇用した経験が無い美容室には、この制度を利用した外国人美容師の雇用(育成)には相当のハードルがあり、また、実際の一般的な美容室の事業所での日常業務からしても(対応するには)現実的でない部分もあると考えられます。
他方で、美容室の中には、日本人の美容師であっても、従来の業界慣行などによって、給与水準や社会保険加入などの労働条件が法令に反して劣悪な事業者もあり、それらへの手当てとして一定程度の規制を設けることは妥当と思われます。ただし、特定技能に準じた制度設計は、美容室には必ずしもMEETしないことも考えられるため、実際に運用することの容易なかたちに修正されるか否かが、本制度の成否のカギとなるものと思料しています。
この記事を書いた人
村井将一(むらい まさかず)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券(三菱UFJフィナンシャルグループと米モルガン・スタンレーとのジョイントベンチャー)で企業の資金調達やM&Aなどのアドバイスを行う投資銀行業務に従事。
在職中、現場業務に従事しながら従業員組合中央執行委員として職場内の外国人や女性の活躍などのダイバシティ推進、労務環境改善活動に従事。専門は外国人の在留資格手続きに関わるコンサルティング及び財務コンサルティング。
入国管理局申請取次行政書士・CFP(Certified Financial Planner)
日本証券アナリスト協会検定会員
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