経営管理ビザで求められる設備・備品
経営管理ビザが認められるには、事業所にはどのような設備や備品があれば良いでしょうか?
実際の事業運営に必要なものが必要ですが、審査では意外な落とし穴もありますので、注意してください。
経営管理ビザ:事業の遂行に必要な設備・備品
経営管理ビザでは、「事業を営むための営業所として使用する施設が確保されている」必要があります。したがって、必要な設備や備品は事業によってそれぞれ異なります。
入国管理局の審査では、立ち入りでの審査は、原則は無いため写真(書面)での判断になります。※当局が必要とみなす場合は、現地を調査することもあります。そこで事業の実態があると認められない場合は、不許可となる可能性があります。
したがって、原則は、必要な設備・備品が備えられている旨を写真で立証していくしかありません。最近は動画が一般的ですが、動画をUSBやDVDなどに焼き付けても資料としては提出を受け付けてはくれません。
なお、筆者の金融機関での経験ですが、書面の審査は、書き手がかなり意識して説明していかない限り、読み手は書面だけではなかなか理解できないものです。金融機関は担当者へ口頭で説明する機会がありますが、入国管理局の審査は書面だけですので注意してください。
ケーススタディ:不許可事例
業種別のよくある不許可事例は下記の通りです。これ以外にも意外な盲点がある可能性があるので注意してください。
1)貿易会社
貿易会社立ち上げに際して、自分の他に事務員を1名雇いました。他方で、オフィス事務所には、机と椅子、PCが各1台しかない状態(=同時に2人分はない状態)であったところ、「事業を営むための営業として使用する施設が確保されているとは言えない」として不許可になりました。スタッフの人数分の設備備品は確保が必要です。通常は、デスク、机、PC、プリンター、帳票などを保管するキャビネット、電話などは必須とされています。
2)リラクゼーションサロン(整体)
リラクゼーションサロン(整体)では、マッサージ施術用のベッドが必要です。また、経営管理ビザを取得するオーナー本人に認められるのはサロンの「経営」であるため、自分がお客さんをマッサージをすることはできません。そこで、施術をする従業員を二人雇ったところ、ベッドが4台ありました。
「あなたもマッサージする可能性が高い」として不許可になりました。スタッフ3名でベッドが4台、どう見ても経営管理ビザの申請人も施術するだろうと疑われた事例ですが、このような場合は事前に入国管理局への説明の方法を考えておく必要があります。ちなみに、経営管理ビザのオーナーが永住権を取得した場合、オーナーも施術ができるようになります。
3)飲食店の事務所
飲食店の場合も、2)のリラクゼーションサロンと同様に、経営管理ビザを取得したオーナー個人は、料理や給仕の仕事ができませんので、コックさんとウェイター/ウェイトレスさんを別に雇わなければなりません。そして、店舗の経営を管理する事務所は店舗内の空きスペースではいけません。
この場合、店舗の隅のスペースに簡易的なデスクと椅子を置き、簡易的なパーテーションで区切っていましたが、不許可となりました。そこで、店舗の近くにあるレンタルオフィスを借りる事になりました。店舗内の事務所は、更衣室のような狭いスペースでも良いので個室であることが望ましいとされています。
4)中古品輸出事業者
中古品の輸出業者は、買い取った中古品を輸出するための倉庫や敷地などを持つことが一般的です。この場合、事業計画書で説明したボリュームの中古品を輸出するまでに一時的に保管しておく倉庫スペースの面積が著しく狭小(小さくて狭い)で妥当性に欠くとして不許可となった事例です。事業計画書と設備の状況の合理性・妥当性が見られた事例です。
なお、中古品の輸出入でも、自社は貿易の通関業務やアレンジのみを行い、商品の保管業務が発生しないビジネスモデルもあります。その場合は、そもそも保管する場所は不要ですので、そのようなビジネスモデル(商流)である旨をしっかりと事業計画書で説明する必要があります。
この記事を書いた人
村井将一(むらい まさかず)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券(三菱UFJフィナンシャルグループと米モルガン・スタンレーとのジョイントベンチャー)で企業の資金調達やM&Aなどのアドバイスを行う投資銀行業務に従事。在職中、現場業務に従事しながら従業員組合中央執行委員として職場内の外国人や女性の活躍などのダイバシティ推進、労務環境改善活動に従事。専門は外国人の在留資格手続きに関わるコンサルティング及び財務コンサルティング。入国管理局申請取次行政書士・CFP(Certified Financial Planner)・日本証券アナリスト協会検定会員
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