不動産投資業(賃貸業)で経営管理ビザを取る
日本で民泊や不動産投資業を営む予定の外国人です。経営管理ビザを取得することはできますか?
賃料収入等で事業経費と役員報酬を十分まかなえることのほか、財務的にも注意すべき点が多くあります。
不動産投資業(賃貸業)での経営管理ビザ取得
現在、世界的な不動産価格の高騰で、中国大都市や香港などの一部の国や地域で不動産利回りが急低下しています。そこで、比較的投資利回りが高く、不動産取引市場が安定している日本市場で安定的な収益を目指し、かつ、医療や教育その他の住環境が良好であるとして、経営管理ビザを取得したい外国人の方のニーズは多くあります。
また、日本では、近年はインバウンド外国人観光客の増加などで、民泊など宿泊業は活況を呈していました。さらに、改正旅館業法や改正建築基準法による規制緩和などによりビジネスチャンスも広がりました。
賃料収入で全ての事業経費をまかなえること
不動産投資業で経営管理ビザを取得するためには、不動産投資物件の賃料収益で全ての事業経費を会計上まかなえること(=会計上の収支予測がプラスになる事)が必要です。
従って、不動産物件の管理費用、建物減価償却費または支払い賃料、不動産取得に関わる費用に加えて、役員報酬(最低240万円以上〜)、自宅以外のオフィスの賃料、税理士費用その他の事業経費をまかなう必要があります。日本の不動産の利回りを4-5%前後と仮定すると、不動産投資事業では物件価格2億円以上くらいの賃貸不動産物件の所有が1つの目安になります。
また、物件取得に関わる借入金がある場合、その約定返済の金額を除いて、キャッシュフロー・ベースでもプラスになる事が重要です。外国人が経済的に安定的に日本で生活していくために、毎月の借入金を返したら首が回らなくなる状態では困るからです。
注意すべき点
不動産投資業で経営管理ビザを取得するに際し、注意すべき点は以下の通りです。
1)不動産物件取得時等に会計上大きな費用がかかるため債務超過に注意
日本での不動産物件の取得時には、物件価格のみに目がいきがちですが、不動産取得をする際には、不動産仲介手数料や不動産取得税、物件の建物減価償却など多額の費用が会計上計上されます。また、不動産物件の取得時期やそこに入居者が入り、賃料が発生するまでのタイムラグも考えると、不動産の取得からしばらくの間は赤字の状況が続く事もあります。もしも、経営管理ビザで求められる資本金500万円で会社を設立している前提で、初年度決算で500万円以上の赤字を計上することになった場合、債務超過になることもよくあります。
債務超過になると、在留資格更新の際に公認会計士や中小企業診断士などの公的資格を持つ第三者の専門家により、今後1年以内に債務超過を解消する見込みについての意見書をもらう必要があります(費用は概ね15万円〜30万円程度かかります)。債務超過が2年連続続くと、経営管理ビザを更新することができなくなる場合があります。
物件取得は一般的には、オーナーの個人貸付けが大半ですので、自分の個人資金で物件に投資するのだからなんら問題ないと思いがちですが、在留資格審査における企業会計の点で注意が必要です。従って、資本金を大きくしたいところ、資本金の金額によっては消費税等の税務上の論点も生じ得ますので、取得予定の物件に関わる経費や期待できる収益額などを計算しつつ、顧問税理士ともよく相談して決定する必要があります。
一方で、収益を拡大していくためには、新規投資が必要ですので、現実的には、第三者割当増資などによる自己資本の増強をしていかなくてはいけません。
2)不動産投資業は銀行法人口座を開設しづらい
また、不動産投資業は銀行の法人口座を開設しづらいことが多く見受けられます。日本の銀行が不動産業に対して慎重であることに加えて信用力のない(=経営管理ビザは当初1年の在留期間しか認められないため在留期間の不安定さがあります)外国人に対しては、「総合的判断」により口座開設をしないとする銀行も多数あります。
「総合的判断」であるため、なぜダメだったかの理由を知ることはできません。
(私も金融機関勤務の時にまれに「総合的判断」で取引を断っていました。総合的判断の内訳を言うことはできませんので、何を言われてもオウムのように「総合的判断でございます」を繰り返すだけです。)
HPなどに記載されている資料だけでなく、事業計画書や経営者の経歴書、母国には多額の預貯金がある証明などの個人の財産的背景などプラスになる面を積極的に訴求していくことが肝要かと思います。
不動産投資業で経営管理ビザを取るためには
不動産投資業で経営管理ビザを取得し、更新していくためには上記のような留意点があります。また、最近では、ビザ全般の審査の厳格化により経営管理ビザの取得も難しくなっています。具体的には、事業の安定性継続性を判断するために事業計画や外国人本人の適格性や素行などが以前よりも厳格に審査されます。
確実に経営管理ビザを取得し、それをその後も更新していくためには、当初から不動産投資業に詳しい税理士や行政書士などの専門家とタイアップして事業計画を考えていく必要があります。ビザ取得または更新で心配な時はぜひご相談ください。
NOTE: なお、当事務所のサービスを受けずにご自身で申請される方には、その具体的手続きや疎明資料、疎明方法などについてはアドバイスはしておりませんので予めご了承ください。
この記事を書いた人
村井将一(むらい まさかず)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券(三菱UFJフィナンシャルグループと米モルガン・スタンレーとのジョイントベンチャー)で企業の資金調達やM&Aなどのアドバイスを行う投資銀行業務に従事。
在職中、現場業務に従事しながら従業員組合中央執行委員として職場内の外国人や女性の活躍などのダイバシティ推進、労務環境改善活動に従事。専門は外国人の在留資格手続きに関わるコンサルティング及び財務コンサルティング。
入国管理局申請取次行政書士・CFP(Certified Financial Planner)
日本証券アナリスト協会検定会員
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