高度専門職ビザの外国人が日本で起業するには?
高度専門職1号でIT企業の技術者をしています。会社を辞めて貿易会社を起業したいのですが、どうすればよいですか?
選択肢は、永住申請する、高度専門職2号へ移行する、経営管理ビザを取得する、の3つが考えられます。
高度専門職1号ロのまま日本で起業できるか?
まず、日本で起業(事業の経営)ができる外国人は、永住者・定住者・日本人または永住者の配偶者等、経営・管理、高度専門職2号になります。
現在の在留資格の高度専門職1号ロでは、「現在の会社で従事している仕事を主たる活動として、それに関連する事業を従たる活動として自ら経営すること」は認められていますが、今回のように、貿易会社を起業するとなると、現在の在留資格では認められません。
他方で、IT技術関連の小規模な会社を立ち上げて経営することは出来ます。しかし、その場合も、主たる会社員の活動よりも収入やかける時間が大きくなるビジネスは行うことは原則できないと解されますので、あくまで副業のイメージです。したがって、高度専門職1号ビザで働くことが認められた会社の会社員を辞める事もできません。
そのため、もし副業の規模が大きくなる場合は、以下の3択となります。
永住申請、高度専門職2号、経営管理ビザの3択
したがって、高度専門職1号の人が、現在の職務内容と異なる分野で起業(事業を経営)するならば、経営管理ビザか高度専門職2号への変更、永住申請が選択肢となります。
なお、この他にも、高度専門職1号ハも理論上は選択肢になり得ますが、高度専門職ポイントの要件を満たすために起業当初からの高い年収や事業経営の経験年数などが必要となることが多く、事実上は大企業経営者や外国で成功した起業家の日本進出などが稀なケースになると思われます(高度専門職1号ハでの外国人起業)。
また、日本人や永住者との結婚の予定があり、日本人の配偶者等の在留資格に変更できれば、それでも起業は可能になりますが、ここでは一旦選択肢から外しておきます。
1.永住申請
高度専門職は、70ポイント以上なら最短3年、80ポイント以上ならば最短1年の在留で永住申請ができます。もちろん、税金や年金を納付期限通りに納めていること、日本で犯罪などを犯していないかなどの要件を満たす必要がありますが、高度専門職1号の人は、原則は最低年収要件を十分に満たしていることが多く、会社員として働いている場合には、税金や年金の未納などの心配も少なく圧倒的に有利です。
(永住申請の要件はこちらから)
また、永住権を取得していれば、万が一事業を引退した場合でも、日本に住み続けることができます。高度専門職2号や経営管理ビザは、事業を辞めたら在留資格の要件を満たさなくなってしまいます。
さらに永住者の起業は、金融機関からの創業融資が有利になることも注目すべき点です。
2.高度専門職2号への変更
高度専門職1号で3年以上経過しており、要件を満たす場合、高度専門職2号への変更も考えられます。
永住申請との違いは、高度専門職は、1)本国の両親や家事使用人の呼び寄せなどの高度専門職のみに認められたメリットがあるほか、2)入国管理局でも優先的に素早く審査処理をしてくれるため、8~10か月前後の審査期間を要する永住申請よりも早く事業経営を始めることができる点です。
また、経営管理ビザで求められる「500万円以上の出資金(または2人以上の常勤従業員の確保)」や「独立した事業所の確保」といった要件がありませんので、自宅の一室での開業や、少額の資本での起業も可能になります。大きな金額の設備投資が不要であれば、なおさら向いているかもしれません。
高度専門職2号には、以下のような要件がありますので、要件を満たしているならば変更の申請をして起業すべきです。まだ3年が経っていないのであれば、それまでは今の会社で働いて3年を経過したタイミングが1つの目安です。もちろんその他の要件を満たしていなければなりません。
- 高度人材ポイント表で70点以上であること
- 素行が善良であること
- 高度専門職2号へ変更を希望している外国人の方の在留が日本国の国益に合すると認められること
- 高度専門職1号または高度人材外国人としての特定活動の在留資格をもって日本で3年以上在留して当該在留資格に該当する活動を行っていたこと
- 申請人が本邦において行おうとする活動が日本の産業及び国民生活に与える影響等の観点から相当でないと認める場合でないこと
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3.経営管理ビザへの変更
永住や高度専門職2号への変更が今すぐのタイミングでできないのであれば、経営管理ビザを取得することになります。その場合は、500万円以上の出資金等の事業規模や独立したオフィスの確保の要件が課されます。また、在留期間に制限がありますので、銀行融資などでは永住や高度専門職2号に比べて若干不利になります。
飲食店事業のように初期費用が一定程度以上かかる事業などでは、当初から500万円以上の自己資金が必要と思われますので、経営管理ビザへの変更もデメリットにはなりにくいでしょう。
なお、一度、高度専門職から経営管理ビザへ変更してしまうと、高度専門職→永住ビザの優遇要件を満たさなくなってしまうと心配する方がいますが、経営管理ビザへ変更したとしても、高度専門職ポイントを計算した時に永住申請時点及び3年前70点以上または1年前80点以上のポイントが獲得できれば、高度専門ポイントを利用した永住申請を行うことができます。
(ご注意:高度専門職の起業 番外編)
高度専門職向け起業支援
当事務所は、在留資格(ビザ)の取得のみならず、事業計画書作成や収益計画・資金計画などの財務コンサルティングを通じて、事業成功のための事業計画策定及び創業融資等資金調達に至るまでのコンサルティングを併せてしている日本国内でも数少ないファームです。
外国人起業のご相談を随時受け付けていますので、お気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
村井将一(むらい まさかず)
外国人専門起業支援プロデューサー。
~外国人の起業ビザから資金調達までスタートアップを徹底的に支援~
起業のためのビザの不許可・審査長期化のリスクを専門家が極限まで低減。
1977年生まれ。三菱UFJモルガン・スタンレー証券(三菱UFJフィナンシャルグループと米Morgan Stanleyのジョイントベンチャー)で企業の資金調達やM&Aなどのアドバイスを行う投資銀行業務に18年間従事。在職中500人を超える起業家や上場企業経営者に対して事業計画や資本政策などの財務・資本戦略についての助言を実施
専門は外国人の在留資格手続きに関わるコンサルティング及び財務コンサルティング。趣味は日本人アイドルのコンサートとディカプリオ映画と猫と遊ぶこと。
入国管理局申請取次行政書士・CFP(Certified Financial Planner)・日本証券アナリスト協会検定会員
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