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外国人学生のインターンシップビザの厳格化

外国の大学からインターンシップ生を呼びたいのですがどのようなビザ(在留資格)が必要ですか?

給料の有無、インターンシップ期間によって、特定活動、文化活動、短期滞在の3種類のビザが考えられます。

 

 入管当局のインターンシップの考え方

入国管理局では「インターンシップとは、一般的に、学生が在学中に企業等において自らの専攻及び将来のキャリア関連した実習・研修的な就業体験を行うものであることから、インターンシップ生を受け入れる企業等においては、産学連携による人材育成の観点を見据えた広い見地からの対応が求められるとともに、適正な体制を整備した上で,インターンシップ生が所属する大学とも連携しながら,教育・訓練の目的や方法を明確化するなど、効果的なインターンシップ計画を立案することが重要」とされています(ガイドライン)。

しかしながら、十分な指導体制がないまま多数のインターンシップ生を受け入れる事例、インターンシップを労働力の確保の手段としている事例等一部の受入れ機関において不適切なインターンシップの実態が確認されているため、厳格に在留資格審査が行われています。(※実質労働と目される事案は現在原則許可されません。)

 

 外国人学生のインターンシップの種類

日本企業で外国人学生をインターンシップに呼び寄せる場合、インターンシップでの給料の有無や期間によって、「特定活動(告示第9号)」「文化活動」「短期滞在」のいずれかの在留資格が必要になります。

インターンシップは大きくは、企業から給料が出るタイプと、給料が出ない(無給)タイプの2つになります。給料が出る場合は「特定活動」、給料が出ない場合は、インターンシップが90日を超える場合「文化活動」、90日以内の場合「短期滞在」になります。

(給料とは)
給与(報酬)が出るかどうかの判断は、インターンシップの活動を行う学生に対し、就労の対価として企業から支払われる金銭かどうかとされています。具体的には時間給や日額単価に勤務日数をかけた額の金銭が支払われた場合などが該当します。原則として渡航費用、住居費、食費などの実費弁償に該当するものは報酬に含まれません。

なお、報酬額についてはインターンシップの趣旨に鑑み制限は設けられていませんが、インターンシップ制度を安価な労働力の供給源として悪用する事案も発生しているため、①労働関係法令や②専攻との関係、③受け入れ態勢、④インターンシップの実態などは慎重に審査されます。

 

 外国人学生のインターンシップの要件

インターンシップでは、法令規則に基づき、以下のような要件があります。

インターンシップの法令上の要件(平成二年法務省告示第百三十一号)
外国の大学の学生(卒業又は修了をした者に対して学位の授与される教育課程に在籍する者(通信による教育を行う課程に在籍する者を除く。)に限る。)が,当該教育課程の一部として,当該大学と本邦の公私の機関との間の契約に基づき当該機関から報酬を受けて,一年を超えない期間で,かつ,通算して当該大学の修業年限の二分の一を超えない期間内当該機関の業務に従事する活動
①外国の大学の学生であること

(対象となる学生/通信学生は該当しない)
特定活動(インターンシップ)に該当するためには、その学生が卒業または修了した者に対して学位の授与される教育課程に属するものに限られています。学位の授与される教育課程であれば、短期大学・大学院も対象になります。ただし、通信による教育を行う課程に在籍している場合は該当しませんので注意が必要です。また、学生については、日本入国時に18歳以上である者に限ります。

(インターンシップの期間)
特定活動で認められる在留期間は、1年を超えない期間で、かつ、通算して大学の修業年限の1/2を超えない期間内、として定められています。例えば、4年制大学の場合は、日本でインターンシップのために滞在できる期間は1回につき1年となり、通算では2年まで、ということになります。1年以上インターンシップを継続したい場合は、学生はいったん帰国し、再度新たに在留資格の認定申請をする必要があります(大学4年のうち2年間が単位取得のため日本企業でインターンシップというのは明らかに変ですが)。

②大学の専攻とインターンシップの業務内容が関係していること

インターンシップは、教育課程の一部として、大学での専攻インターンシップで従事する業務内容との関連性があり、大学において学業の一環として適正に評価できることが必要です。また、受入れ機関の下で業務に従事する必要があり,派遣先における活動は認められません。

(対象となる業務内容)
また、基本的には一定の知識・技術等を身につけることが可能な活動である必要があり、大学生に求められる知識や教養の向上に資するとは認められないような、同一の作業の反復に主として従事するもの(所謂単純労働と目される業務/例えば清掃や工場での軽作業)については認められません。

例えば、海外の大学で機械工学について学ぶ学生が、大学の単位を取得するために、日本の機械メーカーにおいてインターンシップを受ける場合などです。なお、日本語学部の学生などの場合、対象職種との関連性が明確にし辛いところ、介護事業所で介護業務のインターンシップをする場合等は不許可となるケースが多いようです。

(大学と日本の企業等が契約していること)
外国の大学の学生が、その教育過程の一部として、その大学と日本企業等の間でインターンシップ契約を結び、そのインターンシップへの参加によって大学での単位が認められる必要があります。そのため、インターンシップについての現地の外国大学と日本企業の間にインターンシップに関する契約書がある必要があり、その中でインターンシップを単位として認める旨の記載も必要となります。さらに、以下の項目について、インターンシップ契約書に明記する事が求められています(入国管理局ガイドライン)。

インターンシップ契約の内容

  1. インターンシップの目的
  2. 大学における単位科目及び取得単位数
  3. インターンシップの期間
  4. 報酬及び支払方法
  5. 控除項目及び控除額
  6. 保険内容及び負担者
  7. 旅費負担者
  8. 大学に対する報告
  9. 契約の解除

 

③受入企業の受入体制、指導体制の確保

インターンシップは、教育課程の一部であるため、当該インターンシップを実施する日本の企業において学生を受け入れる十分な体制及び指導体制が確保されている必要があります。実務上は、受入企業の概要やインターンシップで外国人学生を受け入れる理由、そのカリキュラム、受入、指導の体制などがインターンシップ計画書などで十分に説明されていることが必要です。様態によっては社会保険への加入状況などにも注意が必要です。

最近では、より具体的な受け入れ体制や学生への指導の方法(実地と座学)、指導者についても説明が求められていますので、規模の小さな事業者などでは十分な受け入れ体制が確保されていないという理由で不許可になる事例も散見されます。

インターンシップ計画書の内容
(当事務所がアドバイスします)
①インターンシップの目的
①インターンシップの指導体制と評価体制
(インターンシップを統括する責任者および指導員がいること)
(各業務の習熟度等を確認する評価項目や方法、評価者が明確であること)
②講師の略歴、生活相談担当者の略歴
③講義の内容、実学(OJT)の内容とインターンシップでのゴール
④座学と実地のウェイト
⑤タイムスケジュール(月間、週間)
⑥会社の受入れ体制(社員寮、食事、社会保険その他各種保険、報酬、休暇)

 

(受入れ人数)
受け入れ先が技能実習生を受け入れている場合は、一定の受入れ人数の上限が設定されています。

 

 必要書類(例)

インターンシップビザの必要書類の例は以下の通りです。審査厳格化によって、追加して疎明資料が求められることがあります。

  1. 在留資格認定証明書交付申請書 1通
  2. 写真(縦4cm×横3cm)
  3. 返信用封筒 1通
  4. 申請人の在学証明書 1通
  5. 申請人が在籍する外国の大学と日本の受け入れ機関との間で交わしたインターンシップに係る契約書の写し ※ガイドラインに定めた条項が盛り込まれていること
  6. 申請人が在籍する外国の大学からの承認書,推薦状
  7. 単位取得等教育課程の一部として実施されることを証明する資料
  8. 申請人の日本での活動内容,期間,報酬等の待遇を記載した資料
  9. 申請人のインターンシップでの過去の在留歴を明らかにする資料
    ※過去にインターンシップで日本に在留したことがない場合は,その旨を文書(書式自由)にして提出
  10. 申請人の在籍する大学の修業年限を明らかにする資料
  11. ガイドラインに規定する項目に係る説明書
  12. インターンシップ申請理由書
  13. インターンシップ計画書(カリキュラム、企業側の受入体制、指導体制を説明)
  14. インターンシップする企業の概要その他の疎明資料など

 

 

 まとめ

近年全般的に在留資格審査は厳しくなっていますが、特にインターンシップについては厳格化されています。インターンシップの名を借りて、実質的には企業側の短期的な安価な単純労働力の確保が疑われる事案が頻発したために、2020年5月も詳細に示したガイドラインの公表に至った経緯から明らかです。これまでは許可された事案でも、最近では不許可になった事例も数多く見受けられます。

実態が「大学のインターンシップ」でなく「労働力確保のための就労」である場合は、許可はされないと考えていただくと判りやすいです。とはいえ、どこが境界線か分かりづらいところですので、お近くの専門家にご相談されることをお勧めします。

※ご参考:不許可になってしまった場合の対応策
(併せて読みたい)在留資格申請を自分で行うリスク(自己申請のリスク)

 

この記事を書いた人

村井将一(むらい まさかず)
1977年生まれ。三菱UFJモルガン・スタンレー証券(三菱UFJフィナンシャルグループと米Morgan Stanleyのジョイントベンチャー)で企業の資金調達やM&Aなどのアドバイスを行う投資銀行業務に18年間従事。在職中500人を超える起業家や上場企業経営者に対して事業計画や資本政策などの財務・資本戦略についての助言を実施

専門は外国人の在留資格手続きに関わるコンサルティング及び財務コンサルティング。趣味は日本人アイドルのコンサートとディカプリオ映画と猫と遊ぶこと。
入国管理局申請取次行政書士・CFP(Certified Financial Planner)・日本証券アナリスト協会検定会員

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