外国人従業員の募集と採用の注意点
当社で初めて外国人従業員の採用を検討しています。どのような注意点がありますか。
労働関係法令に加えて、入管法令上の在留資格審査の要件、外国人特有の手続きなどの留意点があります。
外国人従業員を募集しようとするときの注意点
外国人の従業員を採用しようとする場合、賃金をはじめとした労働条件について日本人の従業員と差別的な扱いをすることは認められず、また、労働関係法令の基準を下回る労働契約を締結する事も出来ません。併せて、外国人の従業員ならではの、特別な対応等が必要になる場合があります。
外国人の従業員を募集する場合には、労働基準法および最低賃金法をはじめとした労働関係法令や社会保険法令が適切に適用されるように留意が必要です。すなわち、外国人従業員に長時間労働を課したり、最低賃金に満たない賃金で労働させたり、社会保険には加入させないという事は認められません。社会保険関係法令に適合していたとしても、入管法令上の在留資格審査では、原則日本人と異なる待遇を認めていません。例えば、外国人は社会保険関係法令上の最低賃金の水準はクリアしているものの、同じ仕事に従事する日本人より明らかに低額な賃金である場合には、原則在留資格は認められません。
外国人従業員の募集方法
外国人の従業員を募集する場合には、ハローワークや自社の採用ウェブサイトやSNS、学校などから募集する場合と人材紹介事業者からのあっせんを受ける場合に大別されます。人材紹介事業者からあっせんを受ける場合には、適法に有料職業紹介の許認可を受けているか、外国人労働者と違約金や保証金の徴収に関する契約を結ぶなどの、職業安定法などの法令に違反していないかに注意が必要です。
外国人労働者の採用募集に関して、厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」では、雇用しようとする外国人労働者に対して、以下の内容を書面または電子メールにおいて明示するように努めることが定められています。
- 従事すべき業務の内容
- 賃金
- 労働時間
- 就業の場所
- 労働契約の期間
- 労働・社会保険関係法令の適用に関する事項
(外国人労働者が国外居住の場合) - 渡航費用の負担
- 住居の確保 など
外国人従業員が働く事の出来る職務内容
外国人の従業員は、日本人の従業員の方にどのような職務内容にも制限なく従事できる訳ではありません。技術・人文知識・国際業務などの付与される在留資格の種類によって働く事の出来る職務内容が制限される場合があります。他方で、永住者や日本人の配偶者等などの在留資格のように日本人と同様に活動に制限のない在留資格もありますので、採用しようとする外国人の在留資格の種類を確りと確認する必要があります。(※在留資格の種類)
また、在留資格を取得する際には、例えば、一般的に最も多い技術・人文知識・国際業務の在留資格などでは、外国人の学歴やその会社で行おうとする職務内容などの入管法令上の要件があるため、誰でも採用できる訳でも、どのような職種でも採用できる訳であありません。(就労ビザで対象となる職務内容/ならない職務内容)
外国人従業員の採用時の留意点
労働者を雇い入れた時には、雇用契約書または労働条件通知書のほか、労働者名簿および賃金台帳、出勤簿の3点(法定三帳簿)を作成する必要があります。これらは外国人労働者についても同様です。特に外国人労働者について労働者名簿を作成するときには、家族の住所や連絡先、緊急時の連絡先についても把握しておくよう努めることとされています(厚生労働省指針)。
雇用主は、労働者の国籍を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱いをしてはなりません。また、外国人労働者との労働契約の締結に際し、賃金、労働時間等主要な労働条件について、その外国人労働者が理解できるようにその内容を明らかにした書面を交付することが求められます。労働時間に関しては、日本における法定労働時間を遵守し、週休日の確保をはじめとした適正な労働時間管理を行うことが必要です。外国人労働者が雇用契約書または労働条件通知書の日本語を理解できない場合には、その外国人労働者の母国語による書面を交付することになります(労働基準法)。
外国人従業員の採用後の届出
(雇用主)
外国人従業員の採用後には、雇用主企業等は、雇用保険被保険者資格取得届(雇用保険の被保険者にならない場合は「外国人雇用状況届出書」)をハローワークに提出する必要があります。
(外国人本人)
住居地の届出
外国人本人は、新規入国して就職する場合、または、就職に際して転居する場合、住所を定めた日から14日以内に、在留カード等を持参の上、市区町村役場で、居住地の届出を行う必要があります。なお、在留カードを提出して市区町村役場に転入届をしたときは、その転入届が入管法で定める住居地の届出とみなされます。
活動期間に関する届出(転職の場合)
国内居住の外国人本人が転職する場合は、その就労の開始日から14日以内に所属機関等に関する届出手続を行う必要があります。入国管理局への出頭のほか、郵送やインターネットで行うこともできます。