特定技能介護の試験(フィリピンでの実施に見る管見)
特定技能「介護」の試験の難易度と合格率を教えてください。
特定技能「介護」の試験は、合格率が大幅に乱高下しており(直近4割)バラツキがありますので、今後の試験運用を注視する必要があります。
特定技能「介護」試験の合格率は乱高下
フィリピン・マニラで開催された特定技能「介護」の試験結果を時系列に見ると、その試験合格率は乱高下しており、今後どのくらいの合格率に落ち着くか注視が必要です。一般的に日本語習得のスピードが速いとされる漢字圏の国とそれ以外の国など試験開催国によってもバラツキが生じることも想定されます。
なお、合格基準は、介護技能評価試験は全45問(60分)、介護日本語評価試験は全15問(30分)で、各々問題の総得点の60%以上となっています。試験は、コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式で行われ、すなわち、テストセンターでコンピュータを使用して出題、解答するもので、受験者は、ブースで、コンピュータの画面に表示される問題をもとに、画面上で解答します。
大幅に合格率が低下する背景は、試験問題の難化や、併せて十分に勉強をしていない人が受験した可能性が考えられますが、特に介護日本語試験では、極端な合格率の低下する場面も見受けられます。なお、介護技能評価試験の試験水準は、介護職種・介護作業の第2号技能実習修了相当の水準である介護技能実習評価試験と同等の水準とするとされています。
介護技能実習評価試験と同等の水準とは:
介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を自ら一定程度実践できるレベルを指しています。
介護技能試験
- 第1回目(2019年4月) 合格率83.2%
- 第2回目(2019年5月) 合格率41.7%
- 第3回目(2019年6月) 合格率38.3%
- 第4回目(2019年7月) 合格率39.2%
- 第5回目(2019年8月) 合格率41.7%
- 第6回目(2019年9月) 合格率43.2%
介護日本語試験
- 第1回目(2019年4月) 合格率85.8%
- 第2回目(2019年5月) 合格率36.0%
- 第3回目(2019年6月) 合格率24.3%
- 第4回目(2019年7月) 合格率45.5%
- 第5回目(2019年8月) 合格率52.7%
- 第6回目(2019年9月) 合格率43.4%
特定技能「介護」試験の難易度の設定の方針
特定技能「介護」試験の難易度及び合格基準については、厚生労働省及び試験を実施する事業者が、介護業務について専門的な技能、技術又は学識経験を有すると認められる者の意見に基づき問題の難易度等の補正を行い、合否の基準を決定するとしており、厚生労働省では、今回の試験の採点、試験問題の内容、正解と配点等に関する問い合わせには一切応じられないとしています。
なお、介護技能試験に係る運用要領は、「試験実施の状況等を踏まえつつ、適宜見直しを行う」としており、今後、どの程度の合格率の試験として運用していくのか現時点では不透明です。
(=コンチネンタル・リサーチ&コンサルティングでは、介護という事業の様態を鑑みると、介護する人の技能水準の維持や安全性の確保、問題が起きた場合の監督官庁の責任(ひいては政府及び政権与党の責任)などを鑑みると、受験すれば誰でも合格できるようなものにはならないと考えています。したがって、将来的には、試験の難易度が特定技能介護の推進を阻む要因となることもあり得ると予想しています。)
なお、介護日本語の試験については、通常の日本語能力試験と同様に、中国などの漢字圏の国が(試験に通りやすいという意味では)、英語圏や漢字圏以外の言語の国よりも相対的に有利ではないかと考えています。
この記事を書いた人
村井将一(むらい まさかず)
新しい在留資格制度に関わるビジネスモデル構築コンサルタント
1977年東京都生まれ。三菱UFJモルガン・スタンレー証券(三菱UFJフィナンシャルグループと米Morgan Stanleyのジョイントベンチャー)において企業の資金調達、M&Aや株式公開等に関わるアドバイザリーなどの投資銀行業務に18年間従事。
新規上場をめざすベンチャー企業から世界的大企業までの500人以上の起業家やマネジメントに対して資本政策や財務戦略等についてのアドバイスを実施。上場企業経営陣に対する株式での経営者報酬スキームの日本国内初導入案件を担当するなど新しい制度改定にも積極的に取り組む。
外国人起業家への起業支援及び国内企業に対しての新しい在留資格制度に関わるビジネスモデル構築のコンサルティングに従事。
日本証券アナリスト協会検定会員
Certified Financial Planner(CFP)
申請取次行政書士(東京都行政書士会 港支部所属)
【外国人のみなさま】
◆ 日本で働きたい
◆ 日本で会社を作りたい
◆ 結婚したい
◆ 永住したい
◆ 日本国籍をとりたい
【事業主のみなさま】
◆ 外国人を雇いたい
◆ 入国管理局への申請をしてほしい